【ノッキング・ブラシ塗り】

【塗装方法の解説】

本サイトの作品において、主に機体ジュラルミン素地仕上げ部分に用いている塗装方法をノッキング・ブラシ塗りと称しています。特に大戦末期の日本軍機に多く見られる無塗装面の再現を図っています。
概要は、下地となるシャドー・シルバーを均一に吹き、その上にボカシ筆を用いてハイライト・シルバーを軽く叩きぼかしながら全体へ満遍なく乗せます。このボカシ効果にて日本軍機特有の薄いジュラルミン表面の細かい“うねり”を表現しています。

【塗装方法の手順】

手順の解説は、ハセガワ製1/48川西 紫電改「前期型」を作例に順次行っていきます。尚、迷彩塗装のパターンは、日本海軍戦闘機における戦争末期に制定された上面濃緑色と下面無塗装の2トーン迷彩です。
本塗装方法では、エアブラシに加えてぼかし筆を使用します。尚、ぼかし筆は一般模型用のものではなく、化粧メイク用の「熊野筆」を転用し使用します。

使用する塗装筆:ぼかし筆「熊野筆」とは・・・

熊野筆について解説します。広島県熊野町で作られる伝統工芸品で、近年では日本国内だけにとどまらず世界でも有名になってきています。熊野筆は、書筆や日本画筆や洋画筆もありますが、特に最近はメイクブラシとしての需要が高まり、世界中の多くの著名メイクアップアーティストが愛用しているとのことです。その理由として熊野筆で実際に肌を撫でると納得できるのですが、非常になめらかな感触です。これは熊野筆の製法に秘密があり、筆先をカットせずに自然な毛先を活かしたままで製造されているため、独特の柔らかな肌あたりが得られるのだそうです。
熊野筆に使用される毛の種類も数種あり、本塗装方法ではその中でも比較的柔らかい「馬(ポニー)」、若しくは「灰リス(イタチ混毛)」の毛で作られたものを使用します。

作業1:機体下面部分へ下地色(シャドー・シルバー)の塗装

下地色の塗装を行う事前塗装として、国籍章や味方識別帯を塗装で行った箇所、及び翼端灯等の透明パーツ部分はマスキングします。

最初の工程は、下地となるシャドー・シルバーをエアブラシにて均一に吹きます。
因みに今回作例で使用した下地色(シャドー・シルバー色)は、Mr.カラー:スーパーメタリック スーパーステンレス(SM04)です。
【補足】本塗装方法では、最後の仕上げにクリアーコート塗装を行うため、使用するシルバー色はこのクリアーコートによる変色影響の少ないものを選定する必要があります。上記の他で使用出来そうな塗料は、Mr.カラー:スーパーシルバー(C159)、アルクラッドⅡメタリックカラー等が挙げられます。

作業2:機体下面部分へ仕上げ色(ハイライト・シルバー)の塗装

次の工程は、いよいよぼかし筆(熊野筆)を用いて仕上げ塗装を行うのですが、通常の筆塗りと異なる方法で塗装を行いますので下記の準備を行います。尚、使用するシルバー色は下地色と同様にクリアーコートによる変色影響の少ないものを選定する必要があります。
因みに今回作例で使用した仕上げ色Mr.カラー:スーパーメタリック スーパーファインシルバー(SM01)です。

仕上げ色の塗料は通常の攪拌されたビン生状態を使用せずに、時間経過による分離でビン底に溜まっている顔料部分を細いへら状のものですくい取って使用します。この時、上澄みのクリアー塗料の混入は極力避けるようにし、取り皿等に取り分けます。この顔料主体塗料により下地塗装面を荒らすことなく、仕上げ色を薄塗りにて発色させることができます。

取り皿等に取り分けた仕上げ色塗料を、専用溶剤(レベリングうすめ液)で希釈し、ボカシ筆に含ませて下地塗装面へ筆先を垂直に軽く叩きぼかしながら全体へ塗料を乗せていきます。尚、ボカシ筆への塗料含ませ加減は、通常筆塗りとドライブラシの中間ぐらいのイメージです。失敗防止のため必ず試験塗りを行ってイメージに合う感覚を事前に把握して下さい。

下地塗装(エアブラシ)のまま状態
仕上げ塗装(ノッキング・ブラシ)を行った状態

上の写真は、下地塗装のまま状態(左)と仕上げ塗装を行った状態(右)とを比較したものです。下地塗装のまま状態は、エアブラシ塗装により均等できれいなシルバー色で単調な仕上りとなりますが、仕上げ塗装を行った状態は、ノッキング・ブラシのぼかし効果によりシルバー色の濃淡が細かく全体的に現れて趣のある仕上がりになります。

作業3:仕上げ塗装完了後マスキング材の除去⇒全体塗膜の研磨

仕上げ塗装が完了したら、速やかにマスキング材を除去して、下面塗装の完全乾燥(丸1日間の養生をお勧めします)を待って、塗膜全体に番手の高い(細かい目)スポンジ・ヤスリ(使い古して柔らかくなったものを使用すると良いです)で研磨を行います。この研磨の目的は塗膜の表層部分のザラ付き除去やマスキング等塗分け部の不陸を慣らすことと、より自然なぼかし効果への調整です。尚、研磨によりぼかし効果が減じたり、下地プラ面が露出したりする場合がありますが、再度下地塗装⇒仕上げ塗装を行うことでリカバーできます。

作業4:ウォッシング塗料の塗布

全体塗膜の研磨を終えて仕上りの調子整えが完了したら、機体全体色のトーンを整えることと、パネルラインやリベット部分等の凹部への墨入れとを兼ねて、機体全体にウォッシング塗料を塗布します。尚、ウォッシングにはエナメル系塗料を薄めたものやスミ入れ等専用に調合された塗料を使用します。
因みに今回作例で使用したのは、タミヤ:スミ入れ塗料(ブラック)と同(ダークブラウン)を1:1にて混色したものです。

作業5:ウォッシング塗料の拭取り

全体のウォッシング塗装が概ね乾燥したら、エナメル系溶剤を付けたティッシュペーパー等で全体を荒拭きし、更にエナメル系溶剤を付けた綿棒を使って、僅かにウォッシング塗装が残る様に一方向に綿棒を動かして拭き取って行きます。尚、綿棒を動かす方向は、機体胴体部は上から下へ、翼部分は前から後ろへとすると良いようです。

作業6:クリアーコート塗装⇒塗装工程の完了

以上の基本塗装が完了したら、溶剤系アクリル塗料(ラッカー系塗料)のクリアー色にて全体をコート塗装し、これまでの塗装を保護します。
因みに今回作例で使用したクリアー色は、Mr.カラー:スーパークリアー半光沢(C181)です。

以上

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