ファースト・コルセアエース(2020年)

1/48スケール
アメリカ海軍 第124海兵戦闘飛行隊 BuNo02350「白の13」番機
ケネス・A・ウォルシュ少尉 搭乗機 1943年8月
ソロモン諸島ニュージョージア島 ムンダ飛行場

◆作品概要◆
【キットメーカー】タミヤ
【スケール】1/48
【機種タイプ】チャンスヴォ―トF4U-1「バードゲージコルセア」
【作品の完成】2020年12月

コクピット内の射撃照準器のディテールアップ、座席シートベルトの追加。第2風防内のバックミラー、開閉レバーの自作追加。エンジン廻り配線の自作追加。全面のスジ彫直しと全面リベット追加打ち。識別灯、翼端灯、主翼前縁部のガンカメラ・接近灯のクリアーパーツ置換え。主脚ブレーキホース、アンテナ線(極細テグス)の追加。自作金属部品(ピトー管、アンテナ支柱、薬品黒染め:主翼機銃、機体下部ロッドアンテナ)の置換え。本体塗装は基本迷彩を多重グラデーション法(カスケード塗り)により塗色。国籍標識、機体番号は塗装。撃墜マーキング、コーション・ステンシル類はデカール使用

時代が複葉機から単葉機へ移りつつある時代の変化を見据えてアメリカ海軍は、1938年2月に国内の飛行機メーカー各社へ高速で高性能な単葉艦上戦闘機の要求仕様の試作提示を行いました。これに対し当時、まだユナイテッド・エアクラフト社の傘下で一部門でしかなかったヴォ―ト社は、特にこの競争試作には積極的に挑み、競合会社が諸事情により次々に辞退して行く中、実質上単独で開発を進めることになります。本機試作における設計での最大ポイントは、次世代の高性能エンジンを搭載し、そのパワーを最大限に引き出すため大口径プロペラを装備したことです。つまり、ドでかいパワー・エンジンを積んで機体を引っ張りまわすと言う如何にもアメリカンな発想です。ところが、プロペラ式の飛行機にはプロペラ先端と地面との間に一定のクリアランスが必要で、この大口径のプロペラの採用が機体設計を進める上での大きな障害となってしまいます。これはこのクリアランス(プロペラ先端と地面間の距離)を確保するために主脚柱を長くしなければならず、主脚柱の強度確保・補強による荷重増、主脚収納スペース増と連動して主翼骨組みの補強による荷重増等と、不利な問題を抱えることにもなるからです。そこでこの問題を解決するための一発逆転的な発想で採用されたのが、逆ガル型の主翼だったわけです。尚、この逆ガル翼の採用は、主脚柱の短縮化だけに留まらず、前下方視界の確保、主翼上面フィレットの省略化、不時着時の生存率の向上等、道連れ的なメリットも生み出すことになります。しかしこの逆ガル翼、万能薬に非ず。その引き換えに機体性能での運動性・安定性の低下を招くことになります。それでも総合的には海軍の要求水準に達し、また時速400マイル(約644Km/h)を突破した初のアメリカ戦闘機としてエポックメイキングとなります。

加えて、本機ではその独特な機体形状ばかりに注目されがちですが、実は当時のハイテク技術の粋を盛り込んだ意欲作でもあります。それは油圧式で自動展張する折り畳み式主翼機構や90度捩り収納式の主脚等の採用に見られますが、特筆すべきは時代を先取りした「高力アルミ合金スポット溶接」にあります。このスポット溶接(歪みの少ない平滑な表面)、現代では乗用車の組立てに多用されてTV映像でよく作業ロボットが溶接しているシーンで流されいますが、当時ではリベットや枕頭鋲を用いての接合(凸凹うねりがある表面)が主流であることを考えると、この非常に高度な技術をアメリカは、戦前から研究・実験を重ねて実用化出来たことに驚かされます。一方、主翼の外翼後縁部には、前時代の「羽布張り」方式を採用する等、新旧技術の混在するユニークな一面もあり興味深い戦闘機です。

本機F4U-1型は、1942年6月25日に初飛行した最初の量産型(758機生産)です。尚、量産機に対して海軍は、ヨーロッパ戦線での戦訓に基づく仕様変更を盛込み試作機を改修する様に命じ、そのため武装強化で12.7mm機銃を左右主翼内に3挺設置する事により、玉突き的に外翼内部設置の燃料タンクを胴体内に移すことになり、その結果コクピット位置は約900mmも後退することになります。この改修によりコクピットからの前方視界は悪化し、艦上戦闘機としての致命的な欠陥となってしまい、航空母艦での運用は見送られることになります。しかし、捨てる神あれば拾う神ありの諺とおり、その高性能を惜しんだ海軍はその後、ガダルカナルでの巻返しで日本軍航空隊に対抗するため、前線へ進出した海軍海兵隊へ配備することになります。
本作品のマーキングは、初期量仕様でキャノピーがバードゲージ(小枠構造)時代に活躍し、初のコルセア・エースとなったケネス・A・ウォルシュ少尉(総撃墜21機)の搭乗機としています。

本作品は、発売当時(1990年代)から決定版と謳われ、まだ現代でも通用する名作キットの持ち味を活かし素組みにて作製。本実機は外皮金属板の取付けに電気抵抗溶接(スポット溶接)を採用しているが、模型的見せ方を優先しリベット(枕頭鋲)風表現を追加、また、同様に主翼折畳み機構は両翼連動の油圧式であるが片翼のみの展張としています。尚、追加工作は下記の通り。

外装工作の詳細については下記の通り。
・全面のスジ彫直し、全面リベット打ち
・識別灯、翼端灯、主翼前縁部のガンカメラ・接近灯のクリアーパーツ置換え
・主脚ブレーキホース、アンテナ線(極細テグス)の追加
・自作金属部品(ピトー管、アンテナ支柱、薬品黒染め:主翼機銃、機体下部ロッドアンテナ)置換え
・エンジン廻り配線類の自作追加

エンジン部分の製作過程。エンジン各部のハイライト色入れと点火プラグ配線の追加を行っています。また、完成後はほとんど見えませんが、エンジン裏面の排気管には「焼け」による変色(青味)表現を加えています。

塗装全般の詳細については下記の通り。
・本体塗装は基本迷彩を多重グラデーション法(カスケード塗り)により塗色
・機体全体ウエザリング(排気管廻りのスス汚れ、主翼付け根部の塗装ハゲ、主脚部の土汚れ等)
・国籍標識、機体番号は塗装。撃墜マーキング、コーション・ステンシル類はデカール使用

右主翼の外翼前縁部(折り畳み状態)の機銃口より内側(上写真では直下)のガンカメラ(自作クリアーパーツに置換え)に注目。

エンジンカウリングから機首の上面部には、南方特有の強い日差しと潮風による塗膜の劣化・退色を表現。

内装工作の詳細については下記の通り。
・コクピット内の射撃照準器のディテールアップ、座席シートベルトの追加
・第2風防内のバックミラー(鏡面処理)、開閉レバーの自作追加

左主翼の外翼前縁部の機銃口より内側(上写真では左側)の接近灯/アプローチ・ライト(自作クリアーパーツに置換え)に注目。

コルセア胴体燃料タンク部(キャノピー前方)の外板周囲は、密封処理が甘く常にオイル漏れが発生していました。そのため、白色テープを貼り応急処置を行っていた機体もあります。また、左右主翼上面(フラップまで及ぶ)の滑止めコーティングを質感を交え表現。

ピトー管は、大小真鍮パイプの組合わせに真鍮片を溶接にて自作しています。並びに、翼端灯は赤色ライトを仕込んだ透明カバー仕様で、自作クリアー部品に置き換えています。

キットで省略されていた主脚柱の折り畳み用のスプリングを追加しディテールアップ。

コルセア特有の長く尾を引く排気汚れをタミヤ・ウエザリングマスターを用いて表現しています。

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