ディテールアップの目的と効果
特に小スケール・キットの機体キャビン窓ガラスのクリアーパーツは、プラ成形上の都合で表面平滑度、機体本体との別パーツ化による隙間や仕上り面での段差発生の点で、完成後にスケール・アウトしてしまうことが多いです。今回ご紹介する方法は、機体キャビン窓廻りのディテールアップ化について、より作業の難易度を下げた簡易法として、小スケールの機体キャビン内部等のディテールが省略されたキットで、機体表面と一体化した窓ガラスの再現を、スケールに適して仕上げることが出来る方法かと思います。
作業手順
手順の解説は、アリイ(旧LS)製1/72大毎東日社「ニッポン号」を作例に順次行っていきます。組立説明書では、連窓一体化したキット窓のクリアーパーツを機体内部から、はめ込み接着する指示となっていますが、キット窓パーツは使用せず、自作窓ガラスにて対応・再現します。
それでは、以下の写真の順に沿って解説していきます。
下の写真では、まず機体パーツの窓部分の裏側に切り出した透明プラバン(0.2mm厚)を当てて、マスキングテープ等で、透明プラバンがズレない様に仮止めします。尚、切り出し透明プラ板の大きさについて、機体内側面に出来るだけ密着させたいのですが、機体内側面が曲面である都合、最小限の接着代確保のため窓の開口範囲より1~1.5mm程度大き目に設定しています。
次にこの裏当て透明プラ板を機体パーツに接着固定します。接着手順について、一度に行わず先ず最初は、両端部分から瞬間接着剤(中粘度)をつま楊枝等の先に付けて、透明プラ板と機体パーツの隙間に流し込む様に塗布します。そして、接着材が硬化した後、ズレ止めマスキングテープを除去し、裏当て透明プラ板の全周囲を同様に瞬間接着剤にて塗布し、隙間を埋める様に接着します。
上記の作業完了後、透明UVレジンの充填作業に入ります。使用する透明UVレジンは、100均ショップでネイルアート用に販売されている商品でも十分ですので、参考までに今回使用した商品の写真を掲載しておきます。
それでは、透明UVレジンの充填作業の解説に入ります。先ず、機体パーツの表側に養生のため、窓開口の外側に沿ってマスキングテープを貼ります。この後、透明UVレジンの液をつま楊枝等の先に付けて、窓開口部に流し込む様に塗布するのですが、表面が機体パーツ外面よりやや盛り上がる程度まで充填します。この時、透明UVレジンの液内に気泡が入り易いので、裏側の透明プラ板側からも気泡の有無確認を行い、気泡を見つけたら速やかに、つま楊枝等の先を用いてつつき出します。
透明UVレジンの充填後、UVライトや蛍光灯の光を照射して透明UVレジンを硬化させます。硬化後、金属製の平ヤスリ等で 透明UVレジン表面を荒削りします。目安として、養生マスキングテープの表面ぐらいまで切削します。
その後、養生マスキングテープを除去しますが、この状態で透明UVレジン表面は、養生マスキングテープの厚み分機体パーツ表面より凸状になっていますので、細目の平ヤスリ等を用いて段差を無くす様に仕上げ削りします。この時、機体パーツのモールド等が消えない様に注意しながら切削します。
続いて仕上げ研磨作業の工程です。使用するのは耐水スポンジヤスリで、水に付けながら#2000→#4000→#6000→#8000→#1000の順に、一体となった機体パーツと透明UVレジン窓の表面を磨き上げて行きます。
そして最後の仕上げに、ハセガワのセラミック・コンパウンドで研磨を行い作業完了です。
仕上がった透明UVレジン窓について、機体パーツの厚み程度(約1mm)と同等あるため、見る角度でレンズ効果によって多少歪むものの、裏当て透明プラ板との一体化による表裏面の平滑化により、透明度のあるガラス感を得られます。この後の塗装工程では、透明UVレジン窓部分に合わせて切り出したマスキングテープを事前に貼り、塗装作業を進めると面一で隙間の無いスケールに合った仕上りとなります。
最後にこの方法の採択についての目安ですが、機体内部が見え難くなるため、キャビン等のディテールが省略されたキットにおける機体表面と一体化した窓ガラスの再現に効果的だと考えます。
補修方法について
万事物事は、マニュアル通りに行かぬもの・・・。よって、今回の方法で最も失敗しやすい事例への対処方法について解説しておきます。
特に多いと考えるのは、気泡を含んだままでの透明UVレジン硬化です。液体の透明UVレジンを使用するため、硬化前での曲面レンズ効果で、透明UVレジン内の気泡を見落としてしまう事があります。後で、透明UVレジン表面を平滑化すると分かるのですが、時既に遅しで手をこまねいてしまいます。
では、その対処法の手順について紹介します。先ず気泡を発見したら、鋭利なカッターナイフの先を使って気泡に到達するまで透明UVレジン表面を切り取って行きます。この時のポイントは、透明UVレジンの切り口面をすり鉢状にしつつ白濁させないことです。これは、透明UVレジンの再充填を馴染ませることと、白濁物が残留しない様にするためです。
次に透明UVレジンの液をつま楊枝等の先に付けて、切り取られた透明UVレジン窓部分に再充填します。尚、この作業でまた気泡が入ったら、硬化後に同じ処理を繰り返します。
そして硬化後の成形切削、及び研磨工程については、先述の通常手順と同じです。因みに上写真は、気泡除去の補修処理後で、仕上げ研磨作業の工程前の状態確認を行っている状況です。
Fine