【リバース塗り】

【塗装方法の解説】

本サイトの作品における機体迷彩塗装で用いている多段階グラデーション塗装方法の中で、特に工場ロールアウト直後の機体や、試作機等の塗装劣化等がほぼ無い真新しい状態を再現する塗装方法をリバース塗りと称しています。
概要は、ベース色とする溶剤系アクリル塗料(ラッカー系塗料)の各ビン生指定色(ベース色)をエアブラシによる黒系色(シャドー色)立上げ塗装で、濃色から低彩度色(ベース色1)、高彩度色(ベース色2)へ順に色を重ね吹きにてグラデーション構築して行きます。加えて、塗装膜表面の平滑化と下色味の自然浮出しを兼ねた研磨処理を経て、黒系エナメル塗料でのウォッシング。最終に高彩度色(ベース色2)で不具合箇所の部分補修塗装を行います。
この塗装方法の特徴について、一般に迷彩塗装の退色表現は、高彩度色(又は低明度色)の上へ部分的に低彩度色(又は高明度色)を重ねることで塗膜の経年劣化(主に白化現象)とすることが多いですが、これに対して経年劣化の時間的逆回しの発想で逆工程(リバース)、すなわち低彩度色(又は高明度色)の上へ部分的に高彩度色(又は低明度色)を重ねることで真新しい塗膜状況の表現を図っています。また、グラデーション塗装を用いることで外板パネル等のうねりや微妙な色ムラを表現しています。

【塗装方法の手順】

手順の解説は、ファインモールド製1/48試製「烈風」を作例に順次行っていきます。迷彩塗装は、日本海軍における昭和17年(1942年)10月から以降で制定された試作機用の塗粧(味方識別のため機体全面一色塗装)の「黄色C1」の1色迷彩としています。

作業1:パネルライン部分への黒系色ライン塗装

機体各部の組立て完了後、全体にサフェーサー吹きにて下地調整の上、ビンディングツールにてリベット打ちを行った後に全体に使い古したスポンジヤスリを掛けて、リベット打ち時に出来た凸凹を均して塗装下地を整えます。それから、機体迷彩色の塗装を行う事前塗装として、国籍章や機体番号を塗装で行った場合はマスキングします。また、コクピット部分や風防ガラス部分、翼端灯やライト部分についてもマスキングを行っておきます

最初の工程は、キット全体でスジ彫り表現されている全てのパネルライン部分、及び陰となる隙間等の部分へ黒系色(シャドー色)をエアブラシにて細吹きします。
因みに今回作例で使用した黒系色(シャドー色)は、Mr.カラー:赤褐色(C131)です。
【補足】この色を選んだ理由は、この後に塗装するベース色は黄色なので、ブラック色を使用した場合、色味や明度差が強く出る傾向となるのを避けるためです。

作業2:機体全体へのベース色1(低彩度色)の塗装

パネルライン部分等の黒系色(シャドー色)の残し加減については、直接パネルラインへベース色が乗らなければ、ほとんど残らなくても後工程で調整は可能です。

次に、前工程の黒系色(シャドー色)で細吹きしたパネルラインや陰部等を避けて、パネルラインで囲まれた面(パネル・ゾーン)へグラデーションを付けるようにベース色1(低彩度色)をエアブラシにて吹きます。この時、パネルライン部分等の黒系色(シャドー色)がうっすらと残るように調節することがポイントです。
因みに今回作例で使用したベース色1(低彩度色)は、Mr.カラー:キアライエロー(GXNo.4)です。このGXシリーズは、従来のものと比べて隠ぺい力が強いので、非常に有難いです。

作業3:機体全体へのベース色2(高彩度色)の塗装

上写真はベース色2の塗装途中段階の状況。機体胴体の前後で色味が異なることがお解りなるかと思います。因みに胴体後部がベース色2の塗装を完了しています。
上写真はベース色2の塗装をした状況。

さらにベース色2(高彩度色)を細吹きにて、パネル・ゾーン内でリベットラインを避けて吹きますが、その際は前工程のベース色1(低彩度色)や黒系色(シャドー色)が薄っすらと残るようグラデーションを付けます。
因みに今回作例で使用したベース色2(高彩度色)は、Mr.カラー:黄橙色(C58)です。

作業4:マスキング材の除去⇒機体全体塗膜の研磨

塗装が完了したら、クリア部分を除いて部分塗分け、及び国籍章や機体番号のマスキング材を除去します。全体の塗装が完全乾燥(丸1日間の養生をお勧めします)したら、機体全体に番手の高い(細かい目)スポンジ・ヤスリ(使い古して柔らかくなったものを使用すると良いです)で研磨を行います。この研磨の目的は塗膜の表層部分のザラ付き除去や塗分け部の不陸を慣らすことと、パネルラインやリベットラインでの色のグラデーションの調子を整えることです。尚、研磨によって凸部や角部等で部分的に下地色が露出することがありますが、後工程での補修や調整は可能(ただし、限度がありますので最小限に留めて下さい)ですので、作業が完了したらそのまま次工程へ移ります。

作業5:ウォッシング塗料の拭取り完了⇒機体色の部分補修・調整塗装の完了

因みに今回作例で使用したのは、タミヤ:スミ入れ塗料(ブラック)と同(ダークブラウン)を1:1にて混色したものです。

機体全体色のトーンを整えることと、パネルラインやリベット部分等の凹部への墨入れとを兼ねて、機体全体にウォッシング塗料を塗布します。尚、ウォッシングにはエナメル系塗料を薄めたものやスミ入れ等専用に調合された塗料を使用します。全体のウォッシング塗装が概ね乾燥したら、エナメル系溶剤を付けたティッシュペーパー等で全体を荒拭きし、その状態で一旦乾燥させます。
次に、エナメル系溶剤を付けた綿棒を使って、僅かにウォッシング塗装が残る様に一方向に綿棒を動かして拭き取って行きます。尚、綿棒を動かす方向は、機体胴体部は上から下へ、翼部分は前から後ろへとすると良いようです。
この一連の作業が完了したら、ベース色2(高彩度色)をパネル・ゾーン内でリベットラインを避けて吹きます。(必要に応じて再マスキングします。)この時、前工程のベース色2(高彩度色)は、ウォッシング効果でトーン・ダウンしていますので、再塗装色がハイライト色となります。
以上の基本塗装が完了したら、溶剤系アクリル塗料(ラッカー系塗料)のクリアー色にて全体をコート塗装し、これまでの塗装を保護します。
因みに今回作例で使用したクリアー色は、Mr.カラー:スーパークリアー半光沢(C181)です。

以上

タイトルとURLをコピーしました