本作品は、当サイトをご覧頂いた方からのご依頼にて製作代行させて頂いています。ご依頼の機体は、日本海軍局地戦闘機 紫電21型(紫電改)で、マーキングは第343海軍航空隊(通称・「剣」部隊)の戦闘301飛行隊(新選組)隊長で有名な菅野 直大尉機です。
令和3年5月度(第4回)の進捗状況
さて、今月度は地味で長時間の集中力が強いられる全面リベットの手打ち作業を終えて、完成時の仕上がりに大きく影響を与える塗装工程に辿り着き、ようやくゴールが見えてきました。そんなこんなで今月度の製作状況は以下の通りの進捗です。
上の写真は、塗装工程における機体マスキング除去のほやほや状態です。この後、各部を補正しつつ工程を進めていきます。尚、機首上部には仮止めテープを貼ってあります。
リベット打ちの状況
リベット打ちは、ビンディングツール(玉繰り)を用いた手打ちにて行います。このツールを使うことで多くの大戦機で使用された枕頭リベットを◎状表現できます。実機の戦闘機に使われた枕頭リベット径は概ね10mmΦ程度と仮定すると10mmΦ÷48=0.203mmΦ・・・なので、ツール番手は0番(0.2Φ)を使用します。
作業手順は、①市販の詳細図面集を参照しリベットラインをシャーペンにてキットへ写します。因みに使用したシャーペンは0.3mm(芯:2B)です。②次に写したライン上へビンディングツールを使用しリベット打ちを行います。③最後にビンディングツールでプラ面を打つと、凹んだ分その周囲が盛り上がりますので、スポンジヤスリ等で表面を均します。
【①作業の留意点】
・事前にサフェーサーを吹くのは表面キズの有無確認も兼ねて、リベット作業時のシャープペンで引く鉛筆ラインを明瞭化し、かつ比較的に指で触っても落ちにくい様にする目的から行っています。因みに使用したサフェーサーは、ガイアノーツのサーフェーサーエヴォシルバーです。
・リベットラインは、正確に引く必要がありますので、比較的柔軟性がある塩ビ系の定規やコンパス等を使って、等分割線、並行線や垂直線を丁寧に写します。
【②作業の留意点】
・リベット打ちの“キモ”は、リベットラインの「直線性」とリベットピッチの「均等性」です。前者の「直進性」は①作業で正確にライン引きできて、正しくライン上にリベットが打てれば担保できます。後者の「均等性」については、市販のリベットルーラーをライン上に軽く転がして当りを付け目安とすることで調整できます。
・ビンディングツールでリベット打ちをする際は、ツールの先がラインに乗っていてもプラ面が柔らかいので力の方向に微妙にズレてしまいます。よって出来るだけ面に対して垂直に打つ様にする必要があります。また、力を入れ過ぎて使用すると打ち抜いたり、接着部分が割れたりしますので、力加減を常に注意することが肝要です。
【③作業の留意点】
・スポンジヤスリ等で表面を均しの際は、やり過ぎると折角打ったリベットまで消えてしまうので注意が必要です。特に角状部分にはヤスリ面が強く当りますので様子を見ながら作業を進めることが肝要です。尚、消えてしまったリベットは、再度リベット打ちにて復活させます。
シャーペンでのリベットライン写しは、機体を構成する部分毎に分けて行いリベット打ち作業を進めます。一般に日本軍戦闘機は製造工場に隣接した飛行場が無いことが多かったので、機体を分割して運搬する必要性があったため大きく機首カウリング(発動機)部分、主翼を含む機体胴体の前部、及び尾翼を含む機体胴体の後部に分離可能な構造となっていました。この分割ラインに加えて工場内の製作上で発生する分割ラインがありますので、市販の詳細図面集を参照してそれぞれの部位を見極めます。
上の写真は機体胴体のリベット打ち作業が完了し、主翼部分のリベットライン写しが完了した状態。下の写真は主翼のリベット打ち作業が完了し、仕上り確認のためリベットライン写しを消しゴムで除去した状態。この後、機体全体にスポンジヤスリをかける工程:表面均し作業に移ります。
リベット打ち作業が完了したフラップ。尚、表面均し作業でサフェーサーはほとんど取れてしまいますが、リベット・モールドが埋まってしまうリスクを避けるため再度のサフェーサー吹きは行いません。
残りの部分も作業完了。この後、仕上げ塗装工程の前に再度全てのパーツを超音波洗浄器に入れて、パネル・ラインやリベット・モールドに残っているプラ粉の除去と同時にパーツの油脂等の洗浄を行います。
塗装工程の状況
リベット打ち工程が完了したので水平尾翼を機体に接着し、ようやく「士」の字の形になりました。これでようやく塗装工程に入ることが出来ます。早速、機体迷彩塗装に先駆けて、国籍標識、味方識別帯、隊長機帯、機体番号等を塗装し、各部へマスキングを施します。
機体上面の塗装を当ウェブサイトでの塗法「カスケード塗り」で基本塗装の途中状態。尚、今回の仕上がりは、依頼主の要望でグラデーション明度差を極力低減しています。次に機体下面の塗装準備として、マスキングを施します。
下面塗装は実機ではジュラルミン素地仕上げなので、当ウェブサイトでの塗法「ノッキング・ブラシ塗り」によるシルバー仕上げとします。まず、下地となるシャドー・シルバーを均一に吹きます。
次にボカシ筆を用いてハイライト・シルバーを全体に満遍なく乗せます。これにて「ノッキング・ブラシ塗り」の基本塗装は完了。日本軍機特有の薄いジュラルミン表面の細かい“うねり”を表現。
次月の作業予定
今月の作業は、塗装工程における機体マスキング除去作業まで進捗しました。次月は残りの塗装工程である塗膜研磨、塗分け補正、ウォッシング、クリアーコートの後、各部の組立て、コーションデカール貼り、ウェザリングの作業を経て、晴れて完成の予定です。
※次月(6月)にて本作品は無事完成し、作品ギャラリーにて掲載しています。
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