2025/01/07 製作記事~1/48 モクセイ疾風・立川キ106(タミヤ改造)~#01

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モクセイ疾風・キ106 製作記まとめ(主に工作編)

 キ106は、終戦間際の昭和19年(1944年)に戦略物資であるアルミ合金の不足への対策として、当時の新型気鋭の帝国陸軍の四式戦闘機「疾風」(キ84)をベースに立川飛行機が、木製化に再設計改修して製造した機体です。と言っても部分的には金属を使用し機体大半を木製化した構成となっているのですが、完成試作機は、金属製「疾風」に比べて、17%もの重量増加のため上昇力・速力が低下。訓練用としての使用も考えられたが、強度不足や構造が量産向きでない問題から生産は中止さました。本機は、立川飛行機に加え呉羽紡績や、王子航空機においても試作製造され、合計10機が完成しました。終戦後、アメリカ本国に1機が送られ調査されています。キ106は、木材の組立て用の接着剤(カゼイン系接着剤)の強度発現に問題を抱えており、試験中に主翼下面外板が剥離・脱落するトラブルも発生したが、技術者達のたゆまぬ努力により改良と工夫を継続して加えることで、王子航空機の江別工場(北海道江別市)から福生飛行場(東京都)まで、自力空輸にて800 km以上の長距離飛行に耐えることが実証されました。

素材キットの解説

 今回改造製作のベースキットは、タミヤ48の「疾風」です。決定版のキットは、ハセガワからリリースされていますが、改造ベース・キットは、出来るだけパーツ数が少ない方が製作し易いので、フォルムもしっかりしているタミヤのベテランキットをチョイスしました。

 

まずは、実機関連情報を資料本からお勉強

 模型製作に欠かせないのが実機資料本です・・・が、残された公開実機写真は、非常に少なく。唯一キ106にフォーカスされ比較的入手し易いのは、道新選書が発行する「幻の木製戦闘機キ106」の書籍ぐらいでしょうか。機体に関する具体的な図面やディテール写真等は、載っていませんが文章で開発経緯や設計変更等の情報を得ることができます。

実機キ106に関する唯一?の資料書籍。

 あと、RSモデルズから1/72スケールでキ106のキットが比較的最近リリースされていますので、立体資料として使えそうですが、カテゴリーとして簡易インジェクション・キットなので、各部のディテール、位置レイアウトや大きさに関する信頼性については、注意が必要です。

RSモデルズからリリースされている1/72立川キ106のキット。

 各部のディテールについて、木製と金属製との違いはあれど、同じ金属部分については、構造や仕様は準じているはずなので、定番の資料写真集「エアロ・ディテール」の四式戦「疾風」が使えますね。

定番の資料写真集「エアロ・ディテール」の四式戦「疾風」

 本作品では、上記の資料本に加えて、次項の実機写真画像から得られる情報も検証し、かつ最大限に活用して改修内容を設定しながら製作してみたいと思います。

実機の写真画像

 元請け会社の立川航空機製作所にて完成したキ106のプロトタイプ(1号機)とされる機体。機首カウルの排気管に注目。疾風の量産機(単排気管)と異なり、同試作機と同じ集合排気管となっている。
水平尾翼の位置が、四式戦(キ84)より高いこと、主脚カバーの形状からもキ106と判別できます。また、写真画像における機体面への映り込みから、光沢のある塗装仕上げであることがよくわかります。

 終戦後、恐らく福生飛行場(東京都)にて放棄された王子航空機の江別工場(北海道江別市)製の試製キ106の2号機。尾翼の「4」マークは、オリジナルで、恐らく通算4号機を示しているものと思われます。(通算製作順は、立川航空機製1号機、2号機。王子航空機1号機(通算3号機)、2号機(通算4号機)と想定)

 機体を特定させる部分(尾翼に書かれた機体番号等)が写っていないが、恐らくアメリカ軍に接収されてアメリカ本国移送するために、アメリカ軍の国籍章に塗り変えられ、再整備された王子航空機の江別工場(北海道江別市)製の試製キ106の2号機。

 同じく、王子航空機の江別工場(北海道江別市)製の試製キ106の2号機。この写真におけるポイントは、主脚引込み機構の変更に伴う引込み補助ロッドが確認できる。

 同じく、王子航空機の江別工場(北海道江別市)製の試製キ106の2号機。この写真におけるポイントは、水平尾翼の設置高さが上方にスライドされている点に注目。

 アメリカ本国に送られ調査中の王子航空機の江別工場(北海道江別市)製の試製キ106の2号機。重量軽減のため、主翼内蔵砲が撤去された部分改修型のキ106Ⅱ型のベース機として製作されている。この写真におけるポイントは、尾輪カバー(開閉式)が中止されキャンパス製の泥除けカバーへ変更されている点に注目。

 同じく、アメリカ本国に送られた王子航空機の江別工場(北海道江別市)製の試製キ106の2号機。軍調査後、廃棄のため野外放置されている。この写真におけるポイントは、主翼フラップが蝶型ではないスプリット式に変更されている点に注目。

 同じく、アメリカ本国に送られた王子航空機の江別工場(北海道江別市)製の試製キ106の2号機。軍調査後、野外放置されたため、各部の損傷が進んでいる。この写真におけるポイントは、主脚カバーにおける主輪の覆い部分の分割ライン位置が明瞭となっている点に注目。

【四式戦闘機「疾風」(キ84)から、キ106Ⅱ型への主な外観相違点】

 本作品は、王子航空機の江別工場(北海道江別市)で製作された3機の内、アメリカ本国に送られ調査された2号機(通算4号機/キ106Ⅱ型)を独断と妄想にて製作挑戦します!。
➀重心の変化により機首が延長(全長の微延長)
➁主翼基部の前縁ラインの変更(主脚レイアウト変更に連動)
➂主脚引込み機構の変更に伴う引込み補助ロッド(主脚カバー形状変更も連動)
➃主翼フラップは蝶型ではないスプリット式に変更
➄主翼内蔵砲の撤去
➅垂直尾翼の形状の変更(疾風の試作機タイプ形状に類似)
➆水平尾翼の位置変更(上方へスライド)
➇尾輪カバー(開閉式)が中止されキャンパス製の泥除けカバーへ変更

機首廻りの改修

 タミヤ48の「疾風」の機首廻りのパーツ割りは、独特な構成。発動機の側面カウルは、機体胴体と一体形成。このパーツ割りについて、昔から不思議感があったのを覚えています。尚、タミヤ48の「疾風」について、機首の発動機カウルの長さが約2mm長いので、カット修正が必要です。
(写真:カット修正済み)
 機首の発動機カウルの長さの修正を終えたら早速、「キ106」改修➀に向けて、機首の発動機カウルを防火壁部分でカットし、機首の防火壁部分を前方に約1.5mm延長する改修作業に入ります。

 発動機「ハ45」(海軍呼称では「誉」)ですが、タミヤキット(左側)のパーツ形状は、前後列シリンダーが一体モールドで立体感が乏しいので、ディテールアップのため、同時代リリースのアリイ(旧オオタキ)キット「疾風」(下写真:右側)から移植します。

 両メーカーの発動機カウルの形状について、タミヤキット(下写真:右側)は、下膨れの楕円形。アリイ(旧オオタキ)キット(下写真:左側)は、ほぼ円形。流石、タミヤ。実機の形状を的確に捉えています。

 発動機パーツは、アリイキットを移植するので、発動機取り付け基部もアリイ・パーツを移植。この取り付けに際して機首を前方に延長します。合わせて、機首の発動機取り付け基部に発動機カウルを固定する支持材をプラ板にて上下に設置します。

 そして、発動機カウルの内側には、固定支持材を受けるリブ材をプラ板にて上下に設置します。因みに発動機カウルの縁は、斜めカットして薄く見える様に加工しています。

 発動機を機体にマウントした状態。
アリイの発動機パーツは、タミヤの発動機カウル内部に干渉するので、切削調整を行っています。
尚、発動機前方の減速機パーツは、タミヤパーツを切削加工して立体感を向上ディテールアップを行っています。

 発動機カウリングを機体にマウントした状態。
追加貼りした白色の1.2mmプラ板とパテ盛り部のクリアランス(カウリング上面:約0.3mm)が、
機首の防火壁部分を前方に約1.5mm延長したことを確認できます。

 前方から発動機カウリングを見たショット。発動機の立体感・・・・、奥まっていてあまり分からないですね。尚、減速機におけるプロペラとの間の突出ディテールが、省略されていたのでプラパイプ(3mmΦ)にて追加延長します。因みにプロペラ軸径は、2mmΦにて設定しています。

  今回はこの辺で、ごきげんよう。

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