スミソニアン・レストアTa152H(2020年)

1/48スケール
ドイツ空軍 第301戦闘航空団本部中隊 W.Nr150010「黒の6」番機
1945年04月 ドイツ ノイシュタット・グレーヴェ
スミソニアン博物館ポール・E・ガーバー施設に保管されている唯一の現存機

◆作品概要◆
【キットメーカー】ハセガワ(DRAGON)
【スケール】1/48
【機種タイプ】フォッケウルフTa152H-0
【作品の完成】2020年07月

コクピット内射撃照準器のディテールアップ。機首環状ラジエターの自作追加。エンジン廻り配線の自作追加。全面のスジ彫直し、パネルライン変更・追加と全面リベット追加打ち。排気管のレジンパーツ置換え。主脚ブレーキホースの追加。主脚収納部内の尾輪引上げロッド、及び主脚出し表示棒の自作追加。自作金属部品(薬品黒染め:主翼機銃、機体下部ロッドアンテナ、エンジンフード支持)置換え。アンテナ線(極細テグス)の追加。機体は多重グラデーション塗装(カスケード塗り)。国籍標識、機体番号、帯マークは塗装。

1942年末、既存戦闘機の性能向上を図るのと並行してドイツ空軍は、新しい要求基準に基づく高性能戦闘機の開発をフォッケウルフ社へ指示しました。これを受けてフォッケウルフ社の主任設計技師であるタンク博士は、自身設計のFw190Aの空冷エンジンを液冷エンジンに換装した性能向上型のFw190Dをベースに更なる発展型の開発へ着手します。本機は1943年9月には基本案がまとめられ、Ta152と称されることになります。尚、本機名称をFwとしないでタンク博士の頭文字:Taを冠することが許されたのは、ドイツ空軍が彼の技術者としての偉大な功績に敬意を示し、かねてからの彼の要望を聞き入れたからです。Ta152にはFw190Dシリーズ搭載の液冷エンジンより更に高々度性能を向上させたJumo213Eエンジンが搭載され、ドイツ空軍は各種改良を加えた最終試作型を先行量産型(Ta152H-0)として20機の発注と量産型(Ta152H-1)の調達契約を行いました。

1944年12月フォッケウルフ社コットブス工場で完成し始めたTa152H-0ですが、次の有名なエピソードがあります。
ドイツ本土における制空権が崩れつつある状況の中でタンク博士(設計者であると共にパイロットでもある)は、ある日フォッケウルフ社ランゲンハーゲン工場からコットブス工場で開催される会議に出席するため、工場内に残されたTa152H-0を輸送も兼ねて単身操縦にて現地へ単機で向かいました。残念なことに途中でアメリカ軍が誇る優速戦闘機のP-51Dマスタング2機に発見されることになります。更に残念なことに搭乗機Ta152H-0には実弾が未装備であったため絶対絶命のピンチを迎えることになります。しかしタンク博士は慌てません(もしかしたら少し慌てたかも・・・)でした。なぜなら自らの持てる技術の粋を集めた自信作Ta152H-0には秘策が施されていたからです。それは搭載されたMW50パワーブースターを発動させることで、一時的であるがエンジンのパワーアップ化が可能となり驚異的な増速を得ることが出来からです。実際に本機はグングンとP-51D編隊を引き離すことに成功し、タンク博士は無事にコットブス工場へ降り立つことが出来たとのこと。(素晴らしい!)

本作品のタイトルにもあります様に、本機(W.Nr150010号機)は、アメリカのスミソニアン博物館に保管されている現存する世界唯一のTa152H-0(現状:未レストア/未公開)です。また、本作品はこの現存機を大戦当時の姿へレストアしたらこんな感じ?と言う妄想に着想を得ていますので、迷彩塗色や機体番号等について最新の情報・考証を反映しつつ、概ねフィクションとなっていることを先に断っておきます。
さて、本機について当時のカラー写真が残されていますが、残念なことにイギリス軍に捕獲された時点でオリジナルのマーキングは全て上塗りにて消され、イギリス国籍マーク等が書き入れてある状態に加えて、その後、技術研究用にアメリカへ渡った際にもアレンジされたドイツ国籍マークを追加された状態で撮影されており、オリジナル部分の大半が失われています。しかし、辛うじて当時のオリジナル塗装の片鱗部分は残されており、ここからは想像の翼を羽ばたかせることになります。

本作品は、旧トライマスター社のエッチングパーツ多用キットの廉価版として再販されているTa152H-1(量産型)をH-0(先行量産型)へ改造しています。改造ポイントは、主翼内燃料タンクの有無なので、主翼外板上下面の構成モールド変更・追加(点検ハッチ等追加)と木製尾翼の採用によるパネルラインの変更です。また、製作に当たり、機首エンジンフード(カバー)をオープンとし、下記の追加工作を行いました。
また、本キットのキャノピート・フードは、前後スライドすると共に完成後に取付け出来る仕組みとなっており、旧ライマスター社製キットのFw190シリーズに共通する優れモノ・ギミックとしての”売り”となっています。

外装工作の詳細については下記の通り。
・全面のスジ彫直し、全面リベット打ち
・排気管のレジンパーツ置換え
・主脚ブレーキホースの追加、主脚収納部内の尾輪引上げロッド、及び主脚出し表示棒の自作追加
・自作金属部品(薬品黒染め:主翼機銃、機体下部ロッドアンテナ、エンジンフード支持)置換え
・ガンカメラのディテール追加(左主翼前縁部)
・アンテナ線(極細テグス)の追加

内装工作の詳細については下記の通り。
・コクピット内の射撃照準器のディテールアップ
・キットでは省略されている機首環状ラジエターの自作追加
・エンジン廻り配線類の自作追加
・機体と主翼の内部、主脚・尾輪部等の補強

塗装全般の詳細については下記の通り。
・本体塗装は基本迷彩を多重グラデーション法(カスケード塗り)により塗色
・機体全体ウエザリング(排気管廻りのスス汚れ、主翼付け根部の塗装ハゲ、主脚部の土汚れ等)
・国籍標識、機体番号、帯マークは塗装。コーション・ステンシル類のみキットデカール使用

一見、空冷エンジンを搭載している様に見える機首デザインであるが、ラジエター(冷却器)を液冷エンジン前方にセットすることで、正面面積の最小化を図り空気抵抗の低減化に成功しています。これは、ベース機のFw190が空冷エンジン搭載で設計されるも、性能向上型への改良には液冷エンジンへ換装が不可欠と判断し、機体改造を最小限に留められる様に予め設計に盛り込んだデザインを行ったタンク博士の技術者としての非凡さには舌を巻いてしまいます。

本キットで、エンジンカウル・ハッチを展開状態にする場合は、胴体パーツの機首部分を慎重にカットする必要がありますが、ハッチ自体は別パーツが用意されています。尚、ハッチ・オープン状態とする場合は、そのまま部品同士を接着するだけでは強度的に不足(完成後に破損の恐れ有り)なので、真鍮線にて補強を入れています。(どこからも見えないように)

本機を含め、Fw190シリーズのキット製作時の難関・難所がここ、主脚の取付け角度です。主脚は前後左右に角度がついており、かつ主車輪は接地面に垂直にセットされています。図面資料をにらめっこしながら念入りな仮組みによる擦り合わせにて角度決めすることがポイントとなります。

先行量産型のTa152H-0の主翼下面について、パネル割やハッチ配置が量産型のTa152H-1のそれと異なっていますので、見比べて頂けるとよく判ります。

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