試製「烈風」8号機(2020年)

1/48スケール

帝国海軍 製造番号 三菱第908号機

昭和20年09月下旬完成予定にて未完 三菱重工名古屋航空機製作所

◆作品概要◆
【キットメーカー】ファインモールド
【スケール】1/48
【機種タイプ】十七試艦上戦闘機(A7M1)
【作品の完成】2020年03月

現存する写真が無い最後の試製機となった8号機を計画諸元に基づき推定。尚、本機は海軍審査会前での完成時にて、武装は未装備状態。操縦席廻りのディテールアップ。アンテナ支柱、ピトー管の金属置換え。搭乗者手・足掛けの追加。機体フルリベット打ち。主脚出し表示棒の追加。主脚ブレーキホース追加。自重変形タイヤのレジンパーツ置換え。識別灯・翼端灯・尾灯のクリアーパーツ置換え。アンテナ空中線張り。機体は試作機であることを考慮し逆行グラデーション塗り(リバース塗り)にて微妙な表面うねり表現の上、各部汚しを控えめ表現。国籍標識、プロペラ警戒帯、給油蓋類及び主翼上面の歩行禁止線は塗装。

十七試艦上戦闘機における試作機(A7M1)は、終戦までに8機が製作され、生産機(A7M2)の第1号機が完成直前でした。よって、本機は終戦時9機が存在していたことになりますが、試作1号機は、主翼強度の不足が発見され、途中登録抹消となったことを考慮すると従来通り終戦時の現存数は8機となるのでしょうか。
帝国海軍が試作機を8機発注した目的は、短期間での機体性能や改修・改良効果を比較・検証するためで、8機の試作機はそれぞれ異なる目的にて仕様設定され製作されました。試作機と生産機との大きな違いは、発動機(エンジン)にあり、これにより機首カウリング形状が異なることで見分けることが出来ます。試作機は中島製「誉」、生産機は三菱製「MK9A」を搭載しており、この発動機の選択・決定に期間を有したことが本機開発の直接的な遅延に起因しました。この頃「誉」は海軍の局地戦闘機「紫電改」や陸軍の四式戦闘機「疾風」で採用されており、その高性能は検証済みとされていましたが、戦局の悪化に伴い燃料の質も低下し続け、これに起因する故障・トラブル、出力低下に悩まされることになりました。

試作8号機(三菱第908号)は、試作仕様(A7M1)の集大成としての完成形を目指すための機体とされており、燃料噴射装置完備の発動機「誉二四型」が搭載されるはずであったが、この発動機の完成が遅れたため、仮の発動機として従前の燃料噴射装置が未装備の「誉二二型」が搭載されていた。
【主な装備】
・燃料噴射装置完備の発動機「誉二四型」の搭載
・自動消火設備の装備
・救命筏(いかだ)の装備(※詳細不明)
・操縦者前面防弾ガラスの装備
・胴体内防弾燃料タンクと起動用燃料タンクの増設
戦局の悪化により結局、発動機「誉二四型」の搭載計画は破棄され、生産仕様(A7M2)への改造予定へ急遽組み込まれることになる。昭和20年7月28日に試作7号機と共に鈴鹿空襲で破損したため、2機は分解梱包され疎開先の松本市へ鉄道輸送された。製作状況は完成までの進捗率約50%程度で9月完成予定とされていた。終戦後のアメリカ軍引き渡し要求には応えることが出来なかったことを察するに、大空に舞う事なく現地にて解体処分された模様。

本作品のキットは、1/48では唯一発売されているもので、ヴァリエーション版として生産型の11型(A7M2)もあり、現時点での決定版となっています。
私見ですが、特に試製烈風のデザインは、設計者である堀越技師の実績:九六式艦戦、零式艦戦、局地戦「雷電」でのデザインソース(逆ガル主翼、水滴型風防、カウリング内の強制冷却ファン、他)を集大成したことがよく表れています。

追加工作として、機首防火壁部のスリットの開口、排気管の排気口の開口、搭乗者手・足掛けの追加の他、第2風防の内側のある開閉フックは、局地戦「雷電」を参考に自作しています。またキットでは省略されていた操縦者用のヘッドレストは、零式艦戦を参考に自作しています。尚、製造工場からロールアウト直後を想定し、射撃照準器も含めて武装は全てオミットしています。

主翼部の日の丸位置について明確な写真資料等が残っていないため、製作にあたり位置決定する必要がありました。烈風は艦上戦闘機として設計されていますので、空母格納時に主翼先端部を折り畳む機構が備わっています。まさかこの折り畳み部を跨ぐ(日の丸が欠ける)ことは無いと考え、このラインを避けて位置決定(上写真:日の丸の右側の縦ラインが折れ畳み部)しています。

垂直尾翼の頂部に製造番号を記していますが、模型映えのためのフィクションです。因みに試製1号機は「201」、同2号機は「302」、同3号機は「403」とする法則で製造番号が振られていました。

あとがき:実は本作品のような黄色系の塗装で仕上げるのは、なかなか難しいのではないでしょうか。特に黄色系の塗料は隠ぺい力が低いため重ね塗りが必要で、一定の膜厚を確保しないときれいに発色しない特性があり、結果として単調で厚ぼったい仕上がりになる傾向があります。また、本作品の設定が新車ならぬほぼ新品状態であることも配慮する必要があることから、今回の塗装方法については一工夫しています。尚、今回の逆行グラデーション塗り(リバース塗り)についての手順解説は、本サイト内の別ページ「各種技法」に掲載しています。

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