【作品でのねらい/特徴】
当工房の理念として、特に飛行機模型には「おたすき」(おどろき、たのしさ、すごみ、きれい)がなくてはいけないと考えています。これらの意味するところは、まず、「おどろき」には、表現方法の工夫やコンセプトの構築、次に「たのしさ」には、カラーリングやギミック、そして「すごみ」には、ディテール追求やリアル感、最後の「きれい」には、清潔感ある塗装仕上りや適度なウェザリングの施しです。この「おたすき」に基づき、キットの素性を活かしつつ、作品のテーマに沿った創意工夫を行うことを目標にして製作してます。
具体的には、機体表面リベット打ち等の細部表現追加と多重吹き塗装によるグラデーション表現との組合せにより、使い込まれたある種の凄味伴う存在感と艶っぽさの共存をコンセプトに、「小綺麗で使い込まれているも健全で整備が良く行き届いている飛行機」を作品イメージ目標に製作しています。
また、作品の出来栄えや完成後の長期保持を考慮し、国籍章や部隊番号・帯等の大物マークは、塗装仕上げとし極力デカールを使用しない様にし、ウエザリング等の「汚し」の観方については、いわゆるリアリティーの主体表現ではなく、模型に施す化粧(メイク)として位置付けて、模型としての「映え」を引立てる効果とし、「寸止め」最小限に留めています。
【基本工作での留意】
各キット・メーカー持ち味を尊重して素組を基本としていますが、明らかな誤解釈や大幅な省略となっている部分については、可能な限り修正・復元を行っています。
また、外から見える部位(操縦席やエンジン廻り他)へのディテールアップを最小限の手間で定番工作としています。
加えて作業中や完成後の破損防止対策として、自作による細部部品等の金属化置換えによる強度確保や補強追加を適宜行っています。
【基本塗装について】
◆多段階グラデーション塗法(カスケード塗り)
機体迷彩塗装に用いている塗装方法。概要は、ベース色とする溶剤系アクリル塗料(ラッカー系塗料)の各ビン生指定色と、これらベース色を基準に一定のルールにて混色した中間色(基準色2色に付き1色)を加え、エアブラシによる黒系色(シャドー色)立上げ塗装で、濃色から中間色、明色へ順に色を重ね吹きにてグラデーション構築して行きます。加えて、塗装膜表面の平滑化と下色味の自然浮出しを兼ねた研磨処理を経て、黒系エナメル塗料でのウォッシング。最終にベース色や中間色で不具合箇所の部分補修とハイライト色の部分追加塗装を行います。
この塗装方法の特徴は、迷彩塗装に用いる各指定色(ベース色)とこれらの混色(中間色)、及び黒系下地色(シャドー色)との間で、全体的に連携かつ統制された階段状(カスケード)の色調(色相・明度)を構成することであり、グラデーション塗装を用いて外板パネル等のうねりや塗装面の経年劣化を表現しています。
◆暗清色照射塗法(ワンウェイトーン塗り)
概要は、溶剤系アクリル塗料(ラッカー系塗料)のビン生色を用い、まず全体に「陰影」となる黒系色(暗色)をエアブラシにて均一に吹いた後、白系色(清色/下地)を操縦室等の機体内部へ自然光が入射(機体下面は地面等からの反射)する方向を意識し、一方向から吹付けることで塗装による人工的な陰影をつくり、これをベースに仕上げ色(清色)を全体的にコーティング吹きすることで立体感の強調を図っています。
【汚し等について】
◆エイジング(経年劣化の表現)
塗膜劣化による退色と蓄積された汚れとを大別し、基本塗装過程での加減対処、基本塗装完了後では上面部分を主体に油絵具等で多色を少量用いて、塗伸ばしと部分拭取りで表現しています。
◆ウェザリング(使用汚れの表現)
排気汚れ・タイヤ面やその廻りの土汚れをパステル等の粉系、オイル漏れ汚れをエナメル系塗料等の筆塗り、及びパイロットや整備員による擦れ汚れ・キズ等を色染筆にて表現しています。