零戦虎徹~ラバウル邀撃~(2023年)

1/48スケール

帝国海軍 第253海軍航空隊 岩本 徹三 飛曹長 搭乗機

昭和19年02月 ラバウル トベラ基地

◆作品概要◆
【キットメーカー】タミヤ
【スケール】1/48
【機種タイプ】零式艦上戦闘機22型甲
【作品の完成】2023年06月

操縦席及びその廻りのディテールアップ。発動機点火プラグ線の追加。プロペラの磁石脱着加工。アンテナ支柱、ピトー管及び機首機銃の金属置換。搭乗者手足掛けの追加。機体フルリベット打ち。主脚出し表示棒の自作追加。主脚ブレーキホース追加。アンテナ空中線張り。増槽のディテールアップ。機体外板凸凹表現の追加工作。機体は多段階グラデーション塗装による艶消し仕上げ。また、コーション類を除いた帯・機体番号と国籍標識は塗装。

 昭和19年2月某日、「敵戦爆連合大編隊、約200機、ラバウル方面に向かう!」の指揮所からの一報を受けて、岩本飛曹長は、いつもの気転を効かせて一人素早く愛機102号機に取り付いた。振り返ると発動機点火要員の整備員や非番の搭乗員が、少し遅れてこちらに向かっているのが見える。
 今日の邀撃戦は、三号特殊爆弾による攻撃をかける予定だ。いつもの送り狼戦法による攻撃では、敵機が攻撃を終えて帰投するタイミングを計るため、長時間の上空退避を強いられることになる。これを予想して今回も増槽装備としている。
 気になる敵機の来襲する方向の空をチラリと眼をやる。まだ敵影は肉眼では確認できない。この調子だと今回も中隊を引き連れて上手く立ち回れそうだ。少し安心したが油断は禁物・・・、いつもの通り自分に言い聞かせることは忘れない岩本飛曹長であった。

 昭和18年12月7日、横須賀航空技術廠の係員が、三号特殊爆弾なる新兵器をラバウル基地まで空輸してきました。一般に三号特殊爆弾と呼ばれている「九九式3番3号爆弾」は、主として大型爆撃機の編隊を攻撃するために開発された「親子爆弾」で、敵編隊の上空から投下すると時限信管により炸裂し、弾尾から炸裂した114個の弾子を燃えながら飛散させることで、敵機を被弾させる仕組みとなっています。この爆弾は、直径200m、高さ50mから70mほどの範囲内で有効とされたが、時限信管による投下のタイミングも考慮しなければならず、扱いが非常に難しい難物爆弾でもありました。

 早速、同月9日の邀撃戦で、この新型爆弾の効果を試すことになりますが、まず試験台に選ばれたのは当時第201海軍航空隊に所属していた岩本飛曹長の小隊でした。接敵方法も含め爆弾の投下方法、タイミングについて、検証されたデータはほぼ無い中、ベテラン搭乗員の勘に頼るといった内容でしたが、見事に敵編隊機の30機近くを撃墜することに成功します。ただし、長年の経験による勘に頼った攻撃方法のため、精密な攻撃要領については、最後まで作成出来ず仕舞いでした。

 この三号特殊爆弾の取扱いの難しさから、以後も岩本飛曹長による敵編隊への攻撃が都度行われます。昭和19年2月に行われた邀撃戦では、所属する第253海軍航空隊での愛機102号機の修理期間(約10日間)に間借りしていた104号機にて、三号特殊爆弾による攻撃を行ったことが著書「零戦撃墜王」に記載されています。

 また、恐らく著書に記載のないその前後の期間でも、三号特殊爆弾による攻撃が行われと思われます。ラバウル時代で最も長い期間搭乗したと考えられる岩本飛曹長愛機の零戦22型。第253海軍航空隊では102号機ですが、本機での三号特殊爆弾による邀撃戦の一コマを妄想してみました。

 実機の解説です。零式艦上戦闘機22型は、航続距離短縮という先行開発型の32型の欠点を補うために急遽開発・生産された型で、三菱工場のみで生産され昭和17年12月からロールアウトし始めます。発動機(栄21型)や胴体部分の基本設計は32型と同しですが、翼内燃料タンク容量の増量による重量増加に対応するため、主翼を21型と同じ翼幅に戻し、翼端折り畳み機構も復活した結果、急降下制限速度は低下することになりました。本型は昭和18年以降のソロモン諸島での戦いに優先的に投入されましたが、その頃にはソロモン諸島に前進基地が設置されており、折角回復した航続距離性能も意義が薄れる状況となっていました。22型甲は、主翼の20mm機銃を九九式二号三型に換装した武装強化型で、昭和18年の春頃から52型の生産が始まる同年8月まで生産されました。22型の生産機数は、武装強化型の甲型を含めて560機でした。

 22型ロールアウト時期の基本塗装は、主翼前縁に味方識別帯が入ることを除いて、初期迷彩と同様に全面明灰色となっていました。この塗装色の上に上塗りするために支給された現地塗替え迷彩塗装用の濃緑色塗料について、当時の補給状況を考慮すると十分な量が行き渡っていなかったと考えられます。それは、当時の目撃者証言から、この時に使用した上面色は濃緑色は、色味に幅があったとのことで、想像するに、足りない濃緑色塗料を補う目的で、濃緑色塗料を溶剤で薄くして塗装したか、部隊に備蓄してある明灰色塗料と濃緑色塗料とを混ぜて増量した淡緑色塗料を塗装して凌いでいたのかも知れません。

 本作品のマーキングは、総撃墜202機の日本海軍航空隊トップエース岩本 徹三 飛曹長(最終:中尉)搭乗機で、ラバウル・トベラ基地の第253海軍航空隊所属機としています。因みに当時の岩本機の写真は存在せず、零戦の資料本に掲載のマーキング図等は、岩本氏の著書「零戦撃墜王」の記述文章からの想像に基づくものです。

 近年になって、岩本氏の著書「零戦撃墜王」の元となった遺稿ノートの一部が公開(歴史街道8月号 2009年 PHP研究所発行)され、その中に機体胴体に「桜」の撃墜マークと共に白帯が斜めに入った零戦側面スケッチ図があったこと。更に戦時中報道された南方航空基地(部隊不明)の写真において、機体胴体に同様の斜め白帯(指揮所マーク)の入った零戦52型の撮影写真(SWEET 1/144 零戦52型/52型甲 パッケージ解説参照)が掲載されており、遺稿スケッチ図と概ね一致することから、想像の域を出ませんが岩本機の最新考証として反映しています。

 本キットは、今から10年以上前の2010年発売ですが、現在も国産零戦キットにおける最新の1/48スケール傑作キットの地位を占めています。モールド・ディテールやパーツの合いは非常に良好でサクサク、カッチリと組上がる「神キット」です。以下、簡単ですが本作品について解説します。
 

 主翼に搭載された20mm機関砲は、先をラッパ加工した真鍮パイプに置換えてあります。右側主翼前縁にあるコクピット内空気取り入れ口には、細めメッシュを追加しています。主翼下面には、他キットから流用の三号特殊爆弾「九九式3番3号爆弾」を追加して懸架しています。

 発動機には、点火プラグ線を極細の金属線を追加しディテールアップしています。落下式増槽は、実機通りの凸リベットで再現しディテールアップを行っています。

 主脚のブレーキホースは、0.3mm径のソフトワイヤーにて追加しています。

 空中アンテナ線は、市販の0.13mm径の黒色ナイロンテグスを使用しました。尚、尾翼のアンテナ線の取付け基部は、極細金属線をよじって制作し取り付けてあります。

 操縦室内の計器盤のディテールアップとして市販のアフターパーツの3Dデカールを使用しています。その他ディテールアップとして、射爆照準器のガラス部分は、0.2mm厚の透明プラ板に置き換えて自作しています。尚、十字照準リングは、ファインモールのエッチングパーツ(日本陸海軍用照準リングセット)から追加し使用しています。

 機体全体にはリベット打ちを追加しています。また、外板凸凹表現をカーブの付いた刃でカンナ削りにて加工、筆塗りによるサフェーサーの盛上げ+シワ付け塗りにて加工を併用して行っています。

仕上り塗装は、多少ヤレた退色感の伴うイメージを再現するため、多段階グラデーション塗装「カスケード塗り」に準じた艶消し仕上げとし、更に色鉛筆によるエイジングを施しています。

 操縦室内の後方にある保護柱(ロールバー)の形状ディテールアップと実機通りの風防内の凸リベットを再現するディテールアップを行っています。

 機体左側胴体には、搭乗員が乗降りするための手掛け・足掛けを真鍮線にて自作追加しています。

 風防・天蓋は、キットのものを使用し縁を薄く削りました。また、第二風防には、キット付属のエッチング・パーツで開閉用のコの字型の手掛けとロック用のバーを取付ています。操縦座席を吊っているゴムひもを真鍮線にて再現し追加しています。

 アンテナ支柱は、真鍮線の削り出しにて自作しています。また、機首の7.7mm機銃は、径の異なる真鍮パイプを組み合わせて自作し置換えています。また、主翼上面の脚出指示棒の内側は実機の検証通り黄色に塗色しています。

 増槽タンクの後部下面には、空気抜きパイプを真鍮パイプにて追加しディテールアップています。

Fine

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