飛行機模型の艶(つや)考 ~“リアルな艶”と“実機に施された艶”との違い~
当サイトの主が、模型製作を通じて感じた事や気付いた事等について、思いつくままに書き綴る「徒然コラム」。第5弾のお題は「飛行機模型の艶(つや)考」です。
今回もお付き合いの程よろしくお願いします。一般に有機溶剤系塗料の仕様では「艶あり」が無調整での基準となっています。これは塗料のベース(展色剤)が透明度の高い合成樹脂であり、乾くと艶を発するからです。この展色剤へ顔料、若しくは染料を添加して様々な塗色を造り出しています。
仕上り塗色と同様に仕上りの艶は出来映えを左右する大きな要素の一つです。実機の塗装が艶消しで施されていても、実際に全体を見るとそのほとんどが何となく半艶消しっぽく見えます。これは塗料の粒子に対し、実機があまりにも大きいためで、余程の塗膜劣化でなければ実機において、全く光を反射しない艶消しとならないためです。これに対し模型では対象物が小さいため、艶消しに調合された塗料を塗ると艶が消えすぎることがあります。更に実機が半艶の迷彩塗装である機体が、妙にテカテカの艶で仕上がっている模型はオモチャぽく、また必要以上に艶消しになった模型もそれはそれで何となく違和感を感じることがしばしばあります。
では、正しい艶の見立てとはどんなものなのか・・・、詰まるところその人のセンスとなりますが、と言って一般に無難で落ち着いた感じに仕上がる艶消し調で、何でもかんでも仕上げればいいと言うものでもありません。ただ、いつも完成後に感じるのが艶のコントロールは思った以上に結果に反映されるものだという事です。だから品の良い大人な完成品は、おしなべて上品な艶を放っているのですね。
大まかに艶の程度を表わすと、全艶あり、八分艶、五分艶、三分艶、艶なしの五段階に分けられるでしょうか。この中で通常よく使われているのは、中三つの 八分艶、五分艶、三分艶 で、 八分艶は艶ありとして、 五分艶は半艶として、三分艶は艶消しとして置き換えられています。実機はこの基準で塗装されていますが、縮尺の小さな模型で実機の雰囲気を再現するには艶の補正が必要になってきます。実機をよく観察してみると、特に陽光下では艶がより強調される傾向にあります。これを考慮すると模型での艶設定の範囲は意外と狭いレンジにあると考えられます。つまり、半艶より少し艶消し気味が「艶消し」、逆に半艶より少し艶あり気味が「艶あり」とする方が実機さながらのスケール感を表現できるということです。
実際に運用されている実機は、塗装自体の艶の程度に加えて機体に付いた土塵やスス汚れも加わって、写真でも正確な塗装表面の艶状況がつかみにくいのですが、艶の見え方について大まかな現象の傾向を把握することで「中らずと雖も遠からず」の境地に辿り着けるのではないでしょうか。このコラムの結論として「スケールモデルの“リアルな艶”は、半艶を基準に“実機に施された艶”への艶補正を行うと再現することが出来る」という考えを提言致します。如何でしょうか・・・。
以上
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