2024/03/16 ニコイチビルド!製作記事~ 1/72 三菱式双発輸送機 大毎東日社『ニッポン号』(アリイ+ハセガワ)~#01

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三菱式双発輸送機 大毎東日社『ニッポン号』 製作記まとめ(主に工作編)

 2つのキットから、それぞれの特性や優れた部分を活かして合成して、一寸贅沢な一品モノを製作するコンセプト製作、名付けて「ニコイチビルド!」。第1弾は、アリイ(旧エルエス)からリリースされている「ニッポン号」です。この古の優等生キットを現代の新金型キット(ハセガワ)からパーツ移植にてアップ・グレードさせて仕上げます。尚、ディテールアップは、旧キットの味を残しつつ、ポイントを絞って出来るだけ最小限に留めます。

キットの解説

 今回使用のキットは、プラモデル黎明期から連なる老舗で昭和30年代頃にプラモデル業界に参入してきた株式会社エルエス(LS:1992年に倒産)から発売された1/72スケール・キットの一つで、「ニッポン号」のキットとしては、現在も全スケールを通じて唯一の存在です。現在は、アリイが金型を買取り当時のままの状態で発売されていますが、元の金型の精度が良く各パーツの合いも概ね良好で、全体フォルムもイメージ良くまとまっています。モールド類は、当時としては珍しい凹モールドの全面パネルラインと全面リベットで、当時の情報誌では、「国産プラモデルとして海外製品と遜色ない製品が出てきた」と評されていました。しかし、現代の目で観ると当時の実機情報不足から、機体各部の細部形状やパネルライン等についての考証は、正確ではありません。

 因みに実機のニッポン号(機体記号:J-BACI)は、1939年の毎日新聞社による世界一周飛行に使用された飛行機で、帝国海軍から貸与された九六式陸上攻撃機を民間用に改装した機体です。
尚、ニッポンの乗員は以下の7名(敬称略)であった。
・使節団長:大原武夫
・機長:中尾純利
・副操縦士:吉田重雄
・機関士:下川一
・技術員:佐伯弘
・機関士:佐藤信貞
・機関士兼通信士:八百川長作

まずは、実機関連情報を資料本からお勉強

 模型製作に欠かせないのが実機資料本です・・・が、ニッポン号のフォーカスされたモノはなく、比較的入手し易いのは、模型誌スケール・アヴィエーションの2010年9月号に特集記事として載っているぐらいでしょうか。ですので、機体や発動機にかかる情報は、ベース機の九六式陸上攻撃機の資料本から得るしか方法がありません。本作品では、主に下写真の資料本を最大限に活用してみたいと思います。

本書には、ニッポン号に関する記載や写真は、少ないながら掲載されています。
模型誌スケール・アヴィエーション(2010年9月号)の特集記事

操縦室の製作とディテールアップ

 それでは製作の解説に入ります。まずは、全体の仮組み確認を行ってパーツ間の組合せや作業手順について把握を行った後、定番の操縦室内の製作から着手です。この機体の特徴として、操縦視界が良い。つまり、外からも操縦室の内部が良く見えると言うことです。ですが、キットの操縦室は、古いキットの例に漏れず非常に簡略化されており、現代目線では流石に看過?できませんので、手を入れてやります。

 と言いつつも、操縦室に関する参考図や写真は、資料本にもあまり掲載されておらず、頭を悩ませるトコロでありましたが、ハセガワ・キットのパーツも参考にして、下写真の形状にて想定構築しました。搭乗員数は7名ですが、想定で操縦室内には、5席(機長、副操縦士、使節団長、機関士、通信士)分を設定しました。

 あと、操縦室の内壁フレームをプラ板(0.3mm厚)で追加、床パーツの固定と補強のためプラ棒を各所に配置しています。

風防天蓋の改修(兼ディテールアップ)

 操縦室部分が機体に納まる見通しが立ったので、風防天蓋のクリアー・パーツの改修に入ります。キット・パーツは、透明度が低く、透過像も歪んでいます。この状態のまま仕上げると仕上りに影響が出ますので補正修正を試みます。

 キット・パーツ補正修正の方法として、耐水サンドペーパーやスポンジヤスリを用いて凹凸面を研磨して平滑面にした後、透明度回復のため番手を上げて耐水サンドペーパーやスポンジヤスリで研磨、最終工程にてセラミック・コンパウンド研磨で仕上げます。しかし、若干マシになった程度で効果の薄い結果となっています。残念ながら、どうやらキットのクリアー・プラ材に原因が有りそうですね。

 そこでBプラン発動です。ハセガワ・キットの風防天蓋パーツをそのまま載せてみると、なんと、外形ラインがピッタリと合うではないですか。これは、時代が古くもキットの実機再現の精度設計が高いことを示します。

 そこで、ハセガワ・キットの風防天蓋パーツが、機体胴体パーツにピッタリと納まる様に調整します。主な調整箇所は、風防前方の機首上面部分の切削(裏当て増張りプラ板が必要)です。キットの断面は、ほぼ円形ですが、実機は緩やかな平面部分を持つラインなので、実機形状に近づける改修にもなります。因みにハセガワ・キットでは流石、時代が新しいだけあって、これを再現しています。これにて、透明度と透過像の歪みの問題は解決、それと風防天蓋枠もシャープになって一石三鳥ですね。

主脚廻りの改修(兼ディテールアップ)

 キットの主脚パーツは、当時流行った収納ギミックを盛り込んだ設計となっています。尚、主脚パーツ自体の解像度が低いのと、主脚庫内部のディテールが実機と大きく異なるため、キット・パーツは使用せず、ハセガワ・キットの主脚パーツを移植します。

 この移植作業で気を付けるポイントは2つ。一つ目は、エンジンナセルに対する主脚の位置です。これについては、資料本やハセガワ・キットから寸法を写し取って位置を決めます。二つ目は、主翼上反角に対する主脚の取付け角度です。これについては、再仮組みを行って主翼間の接地角が直角になる様に主翼パーツと主脚基部パーツとの間にスペーサーを入れて調整します。

 尚、事前にキットの主脚パーツの取付けにかかるキット主翼パーツ内面の不要部分を削りとって整形しておきます。下写真は、キット素組み状態(右)とハセガワ・キットの主脚を移植した状態(左)との比較です。

双垂直尾翼の改修

 下写真は、垂直尾翼で、キット・パーツ(右)とハセガワ・キットのパーツ(左)の比較です。キット・パーツは、ハセガワ・キットのパーツと比べて、丈が高く分厚いです。因みにハセガワ・キットの方が、実機に基づく再現度が高いです。

 下写真は、キット・パーツ(下)とハセガワ・キットのパーツ(上)について、それぞれの垂直尾翼を水平尾翼に組んだ状態の比較です。キット・パーツの垂直尾翼が、ハセガワ・キットのパーツと比べて、分厚いのが良くわかると思います。因みに、水平尾翼の平面形や厚さは、両キットほぼ同じぐらいです。ここでもキットの実機再現の精度設計が高いことがわかりますね。

 上記の検証結果から、垂直尾翼のみをハセガワ・キットのパーツから移植します。これにより尾翼廻りのバランスが良くなりました。

機体キャビン窓廻りの改修

 キットの機体キャビン窓は、クリアー・パーツの連窓となって、機体内側から取付ける構成となっています。この構造における問題点は、製作中の取り回し時で、窓部に不意に外から力が掛かった場合、外れて内部にパーツが脱落する恐れがあること、精度的に窓部パーツと機体パーツとに隙間が生じてスケール感を損なう恐れがあることです。因みに前者の状況となった場合、機体胴体を再分解しなければ修復できません。

 そこで、本作品では、これらの問題?を一挙解決する方法にて対処します。詳しくは下記の機体キャビン窓廻りのディテールアップ(簡易法)にて解説していますので、御覧ください。

機体キャビン窓廻りのディテールアップ(簡易法)
ディテールアップの目的と効果  特に小スケール・キットの機体キャビン窓ガラスのクリアーパーツは、プラ成形上の都合で表面平滑度、機体本体との別パーツ化による隙間や仕上り面での段差発生の点で、完成後にスケール・アウトしてしまうことが多いです。今...

  今回はこの辺で、ごきげんよう。

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