三菱 零式艦上戦闘機21型 製作記まとめ(主に工作編)
ヨンパチ21型はご存じの通り、古く国内模型メーカーの多くからキット化されており、特にタミヤから’70年代発売のベテランキットやハセガワから’90年代に後発発売された新金型キットが現在も主流で頑張っていますね。しかし、どちらもいささか旧態化しつつある現在、新金型キットの発売が待たれていました。そんな中、遠く欧州チェコのメーカーであるエデュアルド社から日本のメーカーとモデラーへの奇襲攻撃の如く、昨年2021年の暮に新金型にてヨンパチ21型がリリースされました。その衝撃は正に「我レ、奇襲攻撃に成功セリ!。トラ・トラ・トラ!」ですね。
本キットのプレ・レビュー
・キットのパーツ構成は掲載写真の通りです。精度は新タミヤ零戦キットと同等で、パーツ数は少し多い感じです。ただ、今後のヴァリエーション展開を考えている設計で、主翼下面パネルを選択式にしたり、風防形状も選択できるように予めセット(11型、21~52型、夜戦型、練習機型)されています。
・最近のエデュアルド社キットの仕様にもれず、機体全体に凹モールド+凹リベット(≒@0.75mm)が彫刻されています。中々綺麗ですが少し浅い感じがします。(新タミヤ零戦キットは凹モールドと一部凹リベット)
・専用のエッチングパーツ(コクピットパネル、風防内把手他)やマスキングシート(風防ガラス、主輪他)がセット。(新タミヤ零戦キットはマスキングシート/風防ガラスのみ)
・エンジンカウリングは主要5パーツで構成されており、専用の組立て治具パーツ付き。(新タミヤ零戦キットは一体パーツ)
・水平尾翼は上下パーツとエレベーターパーツの三ツ割構成。(新タミヤ零戦キットは一体パーツ)
・主脚収納室は主翼パーツと別で十分な深さを確保。(新タミヤ零戦キットと同等)
・デカールは真珠湾攻撃時の参加空母搭載機12パターンで、詳細ステンシル付き。
ところがぎっちょん(再々発)!当サイトの主は、素組みで完成できない病を患っているため、懲りずに写真資料とにらめっこすること数日間、でも近頃めっきり衰えた集中力と根気力とを考慮し、ポイントを絞って改修することとします。
本キットでの改修点!
全面リベットの緻密なモールド、精度の高い各パーツ間の合い・・・、「神キット」の新タミヤ零戦をよく研究して開発されています。パーツ割等までもよく似ています。特に主翼前縁部の操縦室空気取込口まで再現する等、リサーチレベルも高いですね。また、主翼上面の編隊灯までクリアーパーツが用意されていることは驚きです。それに機体や主翼等パーツには、アンダーゲートが採用されており、作る側への気配りも感じます。ヴァリエーション展開も考えられており、主翼ランナーには22型の補助翼や20mm2号機銃用の外装パネル、カウリングには11型用のおちょぼ口型の吸気口、21型後期の大型スピンナー、風防にも11型、21型~、夜戦型、練習機型が用意されています。懸架用爆弾も250Kgや三式六番三号爆弾一型も用意されております。しかし、そのヴァリエーション展開が仇となったのか、主翼フラップは収納状態のみ、機首の潤滑油タンクのサイドパネルのスリットはモールド再現のみである所に、まだタミヤ零戦に一日の長が感じられますね。そして最も残念なのは、零戦の特徴である主翼の「ねじり下げ」が正しく再現されていない事です。そのせいもあって本キットの主翼厚は中央部で0.5mm程度薄くなっています。このキットでの追加改修点を下記に纏めてみました。
【主な改修ポイント】
・操縦室内のロールバー廻りのディテールアップ
・カウリングの7.7mm機銃溝廻りのプチ改修
・翼端の折り上げ加工
→新タミヤ零戦22型/甲型キットの未使用パーツを流用
・増槽の脱着可能化加工
・主翼「ねじり下げ」の再現補正(たぶん、力技で改善レベルが限界でしょうか)
【私の定番改修ポイント】
・発動機の点火プラグ配線の追加
・風防と天蓋の縁厚の薄々加工
・アンテナ支柱、ピトー管、及び武装機銃の金属パーツ置き換え
・アンテナ線張り
・主翼上面脚出し表示棒の追加
・主脚ブレーキホースの追加と主輪の自重変形の加工
・その他、思いつくところ
まずは、最新情報を新刊資料本からお勉強
模型製作に欠かせないのが実機資料本ですね。この「ソコハ何色?」資料本は今年(2022年)1月に出版されたばかりで、タイトルは日本海軍機と謳っていますが、比較的に現存機が多い零戦の細部がどのような色をしていたのかを実機パーツを用いて写真解説されています。また、比較としてレストア雷電と現地残骸化した一式陸攻の内外塗装についても収録されています。零戦については、限られた情報の中で過去にいろいろな方々の検証や新発見で未だ情報が混乱?しているようですので、関連情報の整理と更新、及び増補に役立ちそうです。本作品は、この資料本を最大限に活用してみたいと思います。
定番手順の操縦室から製作スタートではなく、その廻りの仕込み工作から。
仮組みにて、素性の良いキットであると確認できましたので、操縦室内パーツに用意されている怒涛の微細エッチングパーツの取り付けにかなりの労力を消費することを鑑み、先行して機体胴体廻りの追加工作を行います。それでは早速作業内容の説明を行います。実機機首の潤滑油タンクがある外装部にはスリット孔があります。タミヤ新金型の零戦を除く従来のキットでは、凹モールドで表現されているトコロですが、本キットも従来通りの凹モールドになっています。このままでは面白くないので、この凹モールド・スリットをスリット孔に改修します。以下、工作概要です。
まず、キット胴体パーツの機首スリット位置の真裏側に目安用にペン等でラインを引きます。次にこの目安ラインに沿ってキット胴体パーツ裏側をリューターにて削っていきます。時々、位置がズレいないか、均等に削れているかを、光にかざして確認します。適切な深さまで削れると、キット胴体パーツ外側の凹モールド・スリット底が外側に膨れて来ますので、外側から楊枝等で膨れた凹モールド・スリット底を突くと簡単に剥がれます。この後はスリット孔を整形して作業完了です。当然、薄く削ったトコロは強度的に低下しますが、スリット部のパーツ縁部分は削らずおくのと、パーツ自体の無垢材が持つ強度とで、意外としっかりしています。慣れれば簡単なのでおススメです。
更に簡略化仕様でキット製作する場合は、スリットはそのまま切りっぱなしで進めるのですが、タミヤ新金型の零戦では防火壁と潤滑油タンクが再現されていますので、製作精度のバランス(負けない様に?)を取って防火壁と潤滑油タンクを自作してみました。以下、工作概要です。
防火壁はプラ板1.2mm厚を切り出して製作します。その際、ピッタリと内側壁ラインに合うカーブを割り出す必要がありますので、キット胴体パーツ裏側に真弧(まこ)と言う型取り器を当ててラインを写し取ります。また、この自作の防火壁パーツには別パーツとなっている機首上部パーツへの補強のため、つっかえ棒としてランナーを切り出して接着しています。また、潤滑油タンクは、厚みがあるので硬化したエポキシパテ(普段に余ったパテを捨てずにブロック状に硬化させて取り置いたモノ)を削って製作しています。尚、真ん中につっかえ棒ランナーがあるので、その部分を切り欠いて防火壁に接着しています。
集合排気管のディテールアップ工作
零戦の排気管は、初期型では集合排気管で、排気口は機首カウリング下面に左右一か所開口しています。本キットでは従来キットと同じく、固定カウル・フラップの上に排気口モールド付きの部品を張り付ける構成となっています。この点、タミヤ新金型の零戦22型は集合排気管自体をパーツ化しており、排気管孔に奥行のあるリアルなモノとなっています。こんなことに対抗して本キットの集合排気管を改修してみます。改修に際し、キット排気管パーツに替わる肉薄の管状で加工しやすいモノを転用できれば作業が早いですね。そこで今回使用するのは「ストロー」です。特に紙パックジュース等についている径の小さいストロー(外径:約3mmΦ)は、何故か1/48スケール零戦の集合排気管の径とピッタリ同じなんです。ただし、ストローの材質はポリプロピレン樹脂と言うモノなので、プラモ用接着や瞬間接着剤では接着できないのが難点です。しかし最近は硬化後は透明になる水性の硬質プラ用接着剤なるモノが販売されており、こいつが接着に使えます。因みにこの水性接着剤は主にキャノピー等の透明パーツを傷めずに接着できるので、既に皆さんもお使いと思います。以下、工作概要です。
まず、キットパーツの固定カウル・フラップの上にある排気口の外周モールドに合わせて開口します。次に断面を米粒形にピンセット等でつまんで癖を付けたストローを用意します。そして、排気口孔に加工変形させたストローがスムーズに通るか確認します。キットのランナー(曲線のコーナー部)を切り出して、このストロー排気管を取付る基部を作り機体胴体側に接着します。この段階で仮組みを行いストロー排気管を必要な長さに切り出すとよいでしょう。塗装工程で気をつけるポイントについて、ストロー排気管は材質の性質上、模型用塗料の食い付きが弱いので、必ず事前にプライマー塗装を行う必要があります。そして、カウリングを機体へ接着した後に、仕上がったストロー排気管をカウリング排気口に最後に通して、ランナー基部に先程紹介した水性接着剤にて接着します。
発動機マウント部の補強は忘れずに!
本キットの発動機パーツと機体胴体との接合部は殆ど接着剤の強度のみに頼る形状となっています。製作中の取り回しや、完成後でプロペラ等に力が掛かり、その影響で発動機パーツが外れてしまうリスクを軽減するためにアルミパイプ(外径1.2mmΦ)にてダボを仕込んで補強します。尚、接着は瞬間接着剤を使用しています。
機首7.7mm機銃廻りのディテールアップ
胴体機首部分には、7.7mm機銃のガス抜き孔があり、キットでは凹モールドで表現されていますが、開口部としてのシャープさに欠ける印象なので、真鍮パイプ(外径:0.9mmΦ)の先端を斜めにカットし、同径のピンバイスでキットの凹モールドに孔を開けた後、これを仕込んでディテールアップします。
次に改修お題目である機首7.7mm機銃溝廻りのプチ改修の工作です。キットでは機首上部にある7.7mm機銃の溝底が省略されて、機首内部まで筒抜け状態なので、3mm径のプラ棒の軸中心に沿ってピンバイスで1.5mm径の孔を開けて切り出し、自作の溝底部パーツとして追加しています。
また、操縦室に取り込まれる前部風防内の機体外面部に設置されている手掛け孔について、キットでが凹モールドとなっていますが、ピンバイス等で孔を開けて開口しています。
中島製「栄」12型 発動機のディテールアップ
改修お題「発動機の点火プラグ配線の追加」の工作です。今回、点火プラグコードは、リード線を解した極細銅線(約0.1mmΦ)を使用しています。以下、工作概要です。
まず、キットパーツ:点火プラグコード収束管(発動機先端の減速機を囲っているリング状の管)にピンバイスで0.3mmΦの孔を14か所(凸モールド部分の位置で)開けます。次に前・後列の発動機パーツの各気筒前側の点火プラグ位置にピンバイスで0.2mmΦの孔を計14か所(キットの各気筒裏側は肉抜きにて省略)開けます。それから、点火プラグコード・パーツ用に極細銅線から長さ約23mmと約30mmを各7本で計14本を切り出します。尚、長さ約23mmのモノは9mm+14mmに折り曲げて前列気筒用、長さ約30mmのモノは10mm+20mmに折り曲げて後列気筒用に当てます。あと、共通で極細銅線の折り曲げ元部分において、その先端を少し出して細く切ったアルミテープ(幅約0.5mm)巻いて、点火プラグコード取り出し口に見立てます。そして加工が済んだ極細銅線の点火プラグコードは、キットパーツ:点火プラグコード収束管に開けた孔へ、前列用→後列用の順に瞬間接着剤を付けて植えていきます。接着剤が硬化したら極細銅線の点火プラグコードの長さを必要な長さに切り揃えパーツの完成です。因みに本作品では、前列気筒の前用コードを9mm→6mmへ、後列気筒の前用コードを10mm→8mmへ切り揃え、各気筒の後用コードはそのままの長さでキットパーツ肉抜き孔へ入れ込んでいます。
この後、発動機の各パーツを整え塗装工程に移り、塗装完了後の組立・接着段階で、前・後列の発動機パーツの各気筒の点火プラグ孔へ、極細銅線の点火プラグコードを差して瞬間接着剤で接着し完了です。
また、本作品ではプロペラ側に自作シャフトを設ける改修を行っています。これはプロペラの脱着や回転を容易に出来るようする目的で、またネオジム磁石を仕込むことで脱落防止も図っています。以下、工作概要です。
自作プロペラ・シャフトは外径2.0mmΦの真鍮パイプを使用しますので、シャフトが貫通する各発動機パーツには2.0mmΦの孔をピンバイスで開けておきます。また、プロペラ回転の際に軸ブレを最小限にするために設置するキット前列気筒パーツ内にボールベアリング(軸径:2.0mmΦ用/ミニ四駆用パーツを流用)が納まる様に加工します。プロペラ脱落防止用のネオジム磁石(径2.5mmΦ)は発動機パーツ最後部の後列プッシュロッド・パーツに仕込み強力に接着します。各パーツが完成したら個別塗装を行って組立て接着して作業完了です。また、最後に先の工程で機体胴体側にアルミパイプを使用して設けた発動機マウント部の補強に合わせて、忘れずに発動機側にも孔を開けておきます。
因みに本作品では、資料本「ソコハ何色?」に基づいた気筒部分の黒色にガイアカラーのプリズム・ブルーブラック(GP-09)を使用しました。この塗料は黒から青へ見る角度によって変わるパールカラーですが、艶を抑えるとやや青く焼けた上品な黒色に見えるので、プッシュロッドの純黒色との色味違いも表現出来て効果的です。
プロペラ・シャフトの改修工作
続いて、プロペラ・パーツ側の工作概要です。真鍮パイプ製の自作プロペラ・シャフトは、発動機パーツ側に仕込んだネオジム磁石にくっつく様に、真鍮パイプ内にスチール製の針金を仕込んで接着しておきます。また、プロペラ・パーツは、この自作シャフトを貫通接着しますので、ピンバイスで2.0mmΦの孔を開けておきます。スピンナー後部パーツ(忘れない様に!)は、発動機パーツとプロペラ・パーツとの間に挟まる様に真鍮製プロペラ・シャフトに通した上で、プロペラ・パーツを真鍮製プロペラ・シャフトに通して、発動機パーツと組み込みます、発動機パーツ内のネオジム磁石に届く長さを確認して、プロペラ・パーツと真鍮製プロペラ・シャフトとを瞬間接着剤を用いて接着します。これにれ作業完了です。
最後に仮組み機体胴体へプロペラ・パーツを取り付けた発動機パーツを仮設置して隙間やズレ等が無いか各部の確認を行います。
今回はこの辺で、ごきげんよう。
コメント