森林迷彩の空自マルヨン/F-104DJ(2022年)

1/48スケール

航空自衛隊 那覇基地第83航空隊第207飛行隊 昭和58年度戦競事前訓練用塗装機

1983年 小松基地

◆作品概要◆
【キットメーカー】キネティック
【スケール】1/48
【機種タイプ】ロッキード F-104DJ"栄光"
【作品の完成】2022年11月

【外装工作】
・全面のスジ彫直し、全面のビス、クイックファスナー打ち直し。
・アフター部品(ピトー管、ライト類のクリアーパーツ)置換え。
【内装工作】
・基本素組み、各部プラ材・真鍮線にて内部補強
・アフター部品(コクピットパネル、座席シート、シートベルト、バックミラー)置換えと追加。
【塗装全般】
・本体塗装は基本迷彩を多重グラデーション法(カスケード塗り)により塗色。
・機体全体の退色と汚れをエナメル塗料にてウエザリング。
・機体胴体後部の赤帯は塗装、その他はデカール(アフター品)を使用。

 本機は、ロッキード社が開発した第2世代ジェット戦闘機で、アメリカ合衆国初のマッハ2級のジェット戦闘機です。愛称はスターファイター。1958年5月18日にF-104Aが2,260km/hの速度記録を、1959年12月14日にF-104Cが31,500mの高度記録を作りました。

 アメリカ空軍では比較的少数が短期間使用されたにとどまりましたが、F-104Cの改良型であるF-104Gは西ドイツを中心に北大西洋条約機構各国でF-86 セイバーやF-84サンダージェット/サンダーストリークの後継機として大量に採用されました。因みにF-104を最も長く運用したのはイタリア空軍でした。

 航空自衛隊(以下、空自)では、G型をベースにカスタマイズして改良したF-104J、および複座の練習機F-104DJを採用し1963年から運用を開始しました。

 空自での愛称は「栄光」。その卓越した高速性と細い胴体に極端に小さな主翼という形状から来る形態イメージ(ミサイル)で、日本においては「最後の有人戦闘機」と称されました。

 また、空自の現場では、ライセンス生産を担当した三菱重工業に因んで「三菱鉛筆」との愛称もありました。最後は、F-15Jの配備に伴い1986年に全機が退役するまで約23年間、日本の防空に従事し続けました。

 「戦競」とは、自衛隊による各種戦技に応じた競技会である「戦技競技会」の略称です。航自では、航空総隊の元で毎年実施されており、戦闘機部門では、全国の戦闘機飛行隊を一堂に集め、模擬戦闘(戦術競技)を行っています。その目的は、戦闘機パイロットとしての任務遂行に必要な技術を競うことにあり、主に小松基地、新田原基地及び訓練区域で開催されています。

 主に参加する飛行隊は、予備機を含む航空機3機と同競技会に参加経験の無いパイロット5名(予備隊員1名)、整備員で構成されています。これらを第一編隊、第二編隊と分けて、飛行教導群(仮想敵役)との模擬空戦を行い、ガンカメラなどで撃墜判定を行います。尚、単純に撃墜判定を出せばいいわけでなく、空戦における高い戦術能力や僚機とのチーム連携技術も評価対象とされています。

 それから、この競技会に参加する戦闘機の多くには、機体迷彩やノーズアート等の各飛行隊独自の塗装が施され、航空ファンの注目を集めるイベントでもあります。

 複座型のF-104DJは、訓練用であることから通常武装を持たないが、兵装の外部搭載は可能で仕様書ではサイドワンダー運用能力があるとされています。また、本作品の迷彩塗装である所謂、森林迷彩(濃松葉色、薄松葉色、黄土色、ライトグレー)を施した実機は、「戦競」で戦偵連合対処の部門に出場していますので、RF-4Eを模した塗装が採用されたようです。尚、実機の迷彩塗装は、艶消し塗料による応急的な塗装のためか、全体的に激しく退色しています。

 一般にベストなヨンパチのスターファイターと言えば、ハセガワのキットが挙げられますが、今回は、試しで香港メーカーによる新作キットを使用して製作しています。因みにこのキット、J型とDJ型のコンパチなので、どちらかのタイプを一つ製作出来ます。

 当工房主が、ジェット戦闘機では複座型が好みなので、本作品製作では迷わずDJ型を選択。製作方針は素組みですが、計器パネルが彫刻のみでデカールは付いていませんでしたので、別売りエッチングパーツに置き換えています。また、キットのものでは少々物足りない感じがしたので、同様にコクピットシートも別売りレジンパーツに置き換えています。因みにコクピットシートのヘッドレスト上に見えるベルトは、パイロット搭乗の際に、シートベルト装着の便を考えて、跳ね上げたショルダーベルトです。緊急時への対応を考慮した当時の工夫が偲ばれますね。

 本キットの印象として、プラ材質の接着・加工性が良く、パーツ間の合いも良いのですが、ディテールに凝った内容なので細か過ぎるパーツが多く、また部品間の接着も「イモ付け」、「点付け」等があり、正確に組み立てるには、十分な仮組み+擦り合わせ作業が必要になります。

 また、部分的にDJ型で使われていないディテールがあり注意が必要です。本作品の機体塗装について、外装迷彩をいつもの多重グラデーション塗色仕上げとしています。キットDJ型のデカールは、204航空隊006号機ですが、好みで207航空隊017号機に変更しています。

 空気取入口の中心部から突き出ているのは、ショックコーンです。また、機首左側面(コクピット前席のすぐ横)の突起は、AOA(Angle Of Attack:迎え角)センサーです。これを使って、機体の進行方向に対する迎え角を検知するとのこと。

 エンジン排気ノズルは、キットパーツを使用しています。またノズル内は奥のエンジン・リングと共に実機では、薄クリーン系の保護塗装が施されていますので、それらしく基本塗装後、「アルコール落とし法」によるウエザリング塗装を行っています。

 右側の空気取入口部に記載のパイロット・ネームは、自作デカールによるもの。主脚カバー・パーツの取付けは、機体胴体へ「イモ付け」と主脚柱への「点付け」接着となっており、位置決め強度の面で問題を感じます。本作品では、極細銅線にて補強接続にて位置決めと接着補強を行っています。

 本作品を作り終えての感想ですが、素組でもコクピット廻りを含め、全体的に非常に細小な部品構成により、アフターパーツ並みのディテールで構築されていますが、金型設計の都合なのか極小パーツ同士の組立て・接着で精度を要するトコロ、押出ピンがパーツのディテール表部分に出て処理が困難なトコロ等で、作り手への配慮が不足していることから鑑みて、キットの設計で技術的に背伸びしている感がありました。少し残念ですが、組立て説明書を熟読・把握して、工程手順の見直しを行うことで、問題は概ねクリアーできると考えます。新金型によるディテール・フルなマルヨン、やっぱ、かっちょええです。

Fine

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