本作品は、当サイトをご覧頂いた方からのご依頼にて製作代行させて頂いています。ご依頼の機体は、先の世界大戦でドイツユンカース社が開発した輸送機・爆撃機であるユンカースJU-52です。その中でも戦後の払い下げによりスイスの民間航空会社で、遊覧飛行事Air(ユーエア)が所有する1機で、2000年に主翼に大きな腕時計を付けたスポンサーのIWC(スイスの時計メーカー:インターナショナル・ウォッチ・カンパニー)のカラーを身に纏い、世界一周プロモーションを行った「HB-HOS」号です。
令和4年9月度(第2回)の進捗状況
ユンカースJU-52に関する戦時中の資料はそれなりにあるのですが、民間仕様等の特定された現用改修機については、参考となる纏まった写真や公開資料はありませんので、ネット検索にて部分的に入手するしかありません。しかし、それでも不明な点が残り、関連資料から類推しなければならないが多々あり、あちこっちの資料とにらめっこが続いていますが、製作状況は予定通りの進捗で内部改修と塗装仕上げまで終えました。
それでは早速、ここまでの作業過程についての解説に入ります。
客室キャビンの窓ガラス改修
キットの窓ガラス・パーツは、片側づつ各窓が一体化しており、プラ材の質なのか金型の古さゆえか、表面にヒケがあり透明度を損なっています。また、戦時中の仕様で機銃孔付きとなっており、戦後の民間仕様の機体と異なっています。
尚、機銃孔付きの窓に関しては、キット付属の余剰パーツ(下写真 赤丸パーツ)を組込むと問題解決します。
また、透明度に関しては、表面のヒケを除去して平滑にし、更に表面を研磨することで問題の解決を図ります。先ず、細目の金ヤスリを用いて窓ガラス・パーツの表面を平滑にします(下写真 上パーツ)。次にペーパーヤスリで#600→#800→#1000の順に番手を上げて、続いて耐水ペーパーヤスリで#2000→#4000→#6000→#8000→#10000の順に番手を上げて研磨します(下写真 下パーツ)。
そして最後にセラミックコンパウンド(ハセガワ・トライツール)+スーパーポリッシングクロス(ハセガワ・トライツール)で研磨して仕上げます。(下写真)
ご覧の通り、窓ガラス・パーツの透明度が回復しました。因みに機銃孔付きの窓部分は、この後カットして余剰パーツと入れ替えます。
客室キャビン内部の補正改修
まず、先の窓ガラス・パーツ内外で窓部分となるトコロを大きさを合わせて切り出したマスキングテープを貼って保護します。それから、両側の機体胴体パーツに嵌め込んで接着します。
次に機内コクピット+客室キャビンの床パーツについて、仮組み調整にて確認した機体胴体パーツとの取合い位置で、固定と補強を兼ねた丸プラ棒5mmΦを切り出して支持束として機体胴体パーツ側へ接着します。
当初の仮組みで確認された機体胴体パーツと機内コクピット+客室キャビンの床パーツとの隙間を改修するため、コクピット内壁の処理と同様に客室キャビン内壁へプラ板を貼り足します。尚、実機写真を観ると客室キャビン内部も機体構造の鋼管骨格にジュラルミンの波形外板(コルゲート)を貼ったものが露出していますので、客室キャビンの内壁面もコルゲート・モールドとするため、エバーグリーン社製の「カーサイディング・プラシート2020(0.5mm厚/スリットピッチ0.5mm)」を貼り足します。
更に機体のメイン構造材の鋼材は、プラ棒1mm角とプラ板0.5mm厚とをそれぞれ切り出し、組み合わせて簡易的に再現しています。それから再度、仮組みにて機体胴体パーツと機内コクピット+客室キャビン床パーツとの隙間が解消したことを確認します。
本キットの優れた設計思想であり、機体のジュラルミンの波形外板(コルゲート)のモールドに配慮したパーツ割りで、客室キャビンの機体屋根パーツは、左右分割とされずに一体成型されています。折角なので、ここはキットの素性を活かすべく、客室キャビンの機体屋根パーツを完成後も脱着式にして、客室キャビンの内部を見られる様に改修します。
客室キャビンの機体屋根部分の脱着化に際し、脱落防止のためネオジム磁石を組込む工作を行います。使用するネオジム磁石は、5mmΦ(1mm厚)で磁力調整(強くなく、かつ弱くなく)で3枚重ねとし、プラパイプ内径5mmΦ(外径8mmΦ)を埋め込み柱にプラ棒5mmΦを深さ調整のスペーサー、及び蓋をプラ板0.3mm厚から切出し、それぞれを客室キャビンの機体屋根パーツに接着して取り付けます。
また、受け側は客室キャビン外の床側に構築し、同様にプラパイプ内径5mmΦ(外径8mmΦ)を支柱にプラ棒5mmΦを深さ調整のスペーサーにして、鋼製ビスをねじ込みます。因みに屋根側のネオジム磁石との接面高さ調整は、鋼製ビスをドライバーを用いて左右に回すことで簡単にできます。
また、あまり見えませんが、機体胴体の屋根部分の客室キャビン側にもメイン構造材の鋼材をプラ棒1mm角から切り出し、曲げ加工にて接着して簡易的再現としています。この後は、何度も仮組み確認を行い、各パーツの組込み納まりを調整します。
最後に客室キャビンの機体屋根部分についても機体胴体にセットして、仮組み確認・調整を行います。
客室キャビン内部とコクピット内部の塗装
実機のコクピットや客室キャビンでの詳細ディテール再現については、ネット検索にて得られたカラー写真画像が最も参考となります。参考までに今回の製作で参考にした写真画像を掲載しておきます。尚、今回のご依頼仕様は、素組みレベル(あくまで、当工房レベル)となっていますので、各部の再現は、1/72スケールも考慮して簡易改修に留めていますのでご了承下さいね(笑)。
コクピット内部の塗装は、床部を除いて機体外面色のホワイト一色をなっています。その他部分については、WWⅡ時代のものと現代色に塗替えされたものが混在しているようで、写真画像で確認できる範囲は色を実機に合わせています。尚、同じ実機写真でも光の加減で発色が異なって見える部分もあり、その場合は、私見考証の判断にて色を決めて塗装しています。
キャビン内部もコクピットと同様に、床部を除いて機体外面色のホワイト一色をなっています。尚、床部の素材とその色については、鮮明な写真画像が無かったので不明です。考えられる素材として、カーペット類かビニル・シート系のモノがありますが、今回は、ビニル・シート系をイメージして、ドイツ空軍のコクピット内色(RLM66/ブラックグレー)を使用しています。また、実機の写真画像から、キットでコクピットとの隔壁に取り付ける扉は、設置されていない事が確認できますので、本作品においてもオミットしています。
客室キャビン内の客席シートについて、実機のモノと部分的に形状が異なっている様ですが、雰囲気重視でキットパーツをそのまま使用します。但し、シート色については、しっかり再現したいと思います。尚、コクピット内を含め客室キャビン内、及び客席シートの塗装方法は、当ウェブサイトでの塗法「ワンウェイトーン塗り」にて基本塗装を行っています。
客席シート色について、実機の写真画像を見るにピンク系ともベージュ系とも判断しづらいモノとなっています。また、当工房では塗装色における管理上の観点から、混色を可能な限り行わない方針ですので、仕上げ色は、ソリッド・カラー→クリアー・カラーの順に塗装する複合色にて再現しています。因みに今回使用したソリッド・カラーは、ピンクグレー(フィニシャーズ・カラー)で、クリアー・カラーは、クリアーブラウン(ガイアカラーNo.46)です。最後に艶消しクリアーを吹いてコートします。
続いて、客席シートの基本色の塗装を終えた後に各細部の塗分けを筆塗りにて行います。客席シートの脚部はクロームシルバー(タミヤ・エナメルカラー)、肘掛けはグロスブラック(水性アクリル・ファレホ)で塗装しています。この様な塗分けを行う場合は、失敗時のリカバー対策は、各溶剤が異なる塗料を組合せると楽になります。また、客室キャビンの機体屋根部分を脱着化にしたので、見映え上、客席シートのディテール・アップ・・・もとい(素組みなので)、部分改修としてヘッド・カバーとシートベルトを鉛シート(0.2mm厚と0.1mm厚)で自作し、追加しています。
それぞれ塗装仕上げを完了した客席キャビン床に客席シートをセットして仕上げます。
因みに最前客席シートの向きについて、キットでは、後列シートと同じ向きで機体前方向きの配置となっていますが、実機写真から機体後方向きとなって、直後列シートと対面する配置となっています。よって、最前客席シートのみキット床パーツの客席シート取付け溝の位置を変更改修して向きを変えて取り付けています。
機体胴体へ塗装を終えたコクピット+客室キャビンをセットして内装の完成です。
次月の作業予定
今月の作業は、機体内部の補正改修とその塗装仕上げを行いました。次月は機体外部の組立てと部分補正改修を進めて参りたいと思います。
・機体外部の各部組立て、補強工作、及び部分補修
・機体外部の部分塗装(予定)
それでは、次月末まで、ごきげんよう。
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