2023/06/02 製作記事~1/48 零戦22型甲(タミヤ)~#08

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三菱 零式艦上戦闘機22型甲 製作記まとめ(主に工作編)

 前回から引き続きの機体の仕上げ塗装の作業を行い、完成を目指します。それでは手順を追って解説します。

零戦の中期迷彩色(ツートンカラー:濃緑色+明灰色)について

 開戦直後からの全面明灰色の零戦が、戦況の劣勢化に伴い機体上面を濃緑色にする迷彩が施されたのは、三菱の工場で昭和18年6月頃の完成機からとなります。尚、前線基地の零戦隊で、最初にこの迷彩を導入したのはラバウル・ソロモン方面の基地航空隊で、それより早く昭和17年末頃には現地での塗替え塗装にて対応していました。ただし、当時の目撃者証言から、この時に使用した上面色は濃緑色(D2※)だけではなく、淡緑色(M1※)も使っていた可能性があり、現地で塗替えた迷彩零戦は、作業手間の省力化のため、風防枠の下辺までを塗装し枠の上方は塗り残している機体が多く見られたとのことです。(※空技報0266号「零式艦戦迷彩に関する研究」(昭和17年2月 海軍作成)における色番号)
 本作品では、現地塗替え迷彩塗装機を想定し、機体上面色である濃緑色は、やや淡緑色に仕上げます。これは、零戦22型は、昭和17年12月から三菱工場よりロールアウトし始めますが、この時期の基本塗装は、主翼前縁に味方識別帯が入ることを除いて、初期迷彩と同様に全面明灰色となっていました。この塗装色の上に上塗りするために支給された現地塗替え迷彩塗装用の濃緑色塗料について、当時の補給状況を考慮すると十分な量が行き渡っていなかったと考えられます。それは、当時の目撃者証言から、この時に使用した上面色は濃緑色は、色味に幅があったとのことで、想像するに、足りない濃緑色塗料を補う目的で、濃緑色塗料を溶剤で薄くして塗装したか、部隊に備蓄してある明灰色塗料と濃緑色塗料とを混ぜて増量した淡緑色塗料を塗装して凌いでいたのかも知れません。

第253海軍航空隊時代の岩本機のマーキングについて

 本作品の仕上げマーキングは、第253海軍航空隊時代の岩本機として仕上げます。尚、当時の岩本機の写真は存在せず、零戦の資料本に掲載のマーキング図等は、岩本氏の著書「零戦撃墜王」の記述文章からの想像に基づくものです。近年になって、岩本氏の著書「零戦撃墜王」の元となった遺稿ノートの一部が公開(歴史街道8月号 2009年 PHP研究所発行)され、その中に機体胴体に「桜」の撃墜マークと共に白帯が斜めに入った零戦側面スケッチ図があったこと。更に戦時中報道された南方航空基地(部隊不明)の写真において、機体胴体に同様の斜め白帯(指揮所マーク)の入った零戦52型の撮影写真(SWEET 1/144 零戦52型/52型甲 パッケージ解説参照)が掲載されており、遺稿スケッチ図と概ね一致することから、想像の域を出ませんが岩本機の最新考証として反映しています。

ラバウル時代の岩本機となった零戦

 岩本氏が、ラバウル方面に派遣されたのは、昭和18年11月で当時の所属部隊は、第281海軍航空派遣隊です。この時の機材は零戦21型(著書に型式記述あり)でした。同年12月に機材もろとも第201海軍航空隊に転じますので、乗機は零戦21型(著書に型式記述なし)と考えられます。この機体(胴体に60数個の撃墜マーク)は、同12月10日の邀撃戦で発動機不調に起因して被弾し修理不能となり廃棄されます。因みにこの機体、前線の激戦状況を伝えるべく内地へ移送されたとのこと。
 更に戦況は厳しくなり、同12月15日に第201海軍航空隊は解散し、第204海軍航空隊に編入されますが、新たに岩本機の乗機となった型式については著書に記述がありません。尚、戦時中の記録映画「日本ニュース194“南海決戦場”」の後半、岩本氏の姿が大写しで撮影収録されている昭和19年1月に撮影されたラバウル基地での戦闘フィルムでは、撮影された零戦の尾翼機番の部隊マークは、全て第204海軍航空隊の「9-」で始まる零戦21型、22型、52型が配備されており、上面濃緑色の迷彩塗分けも三菱工場生産機と同じとなっているのが確認できます。(NHKアーカイブス 参照)
 昭和19年1月、第204海軍航空隊は、後方のトラック島に転進(撤退)することになりますが、岩本氏を含む戦える搭乗員は、全員残ってトベラ基地の第253海軍航空隊に転ずることになります。機材人材を引き継いだ形での異動ですので、岩本機の零戦型式(著書に型式記述なし)は前部隊のままで、機体番号は、102号機となったことが著書に記載されています。この102号機も同1月下旬頃には整備員の点検で、発動機の載せ替えとなり、その間、104号機(著書に型式記述なし)を間借りすることになります。同年2月9日には、102号機の修理は完了し試運転を行ったと著書に記述があります。また、この時点で、102号機の胴体には、60数個の撃墜マークが描かれていたと著書に記述があります。
 また、Wikipediaには、昭和18年末から昭和19年2月まで、岩本氏が搭乗した第253海軍航空隊の102号機は零戦22型(根拠・出典は未記載)で、撃墜数を表す桜のマークが60〜70個も描かれており、遠目からは機体後部がピンク色に見えたとの記述があります。これから同時期にあたる第204海軍航空隊に編入された以降で、新たに岩本機の乗機となった零戦型式は、零戦の工場生産・配備状況を考慮して22型(甲)と推定し、本作品に反映してみました。

続・機体の仕上げ塗装

 前振りが長くなりましたが、塗装工程の解説に入ります。尚、機体上面の塗装は、当ウェブサイトでの塗法「カスケード塗り」に準じて行いますので、詳細はこちらをご覧ください。
 まず、上面ベース色は、暗緑色(三菱系)(クレオスC124)を使用し、パネルラインで囲まれた部分を狙って吹きます。補足として、この段階ではリベットラインを無視します。

【カスケード塗り/基本形】
【塗装方法の解説】 本サイトの作品において、機体迷彩塗装に用いている多段階グラデーション塗装方法をカスケード塗りと称しています。概要は、ベース色とする溶剤系アクリル塗料(ラッカー系塗料)の各ビン生指定色(ベース色)と、これらベース色を基準に...

 次に中間色(上面ベース色と下面ベース色の混色)を細吹きにて、パネル・ゾーン内でリベットラインを避けて吹きますが、その際は前工程の上面ベース色(濃色)や黒系色(シャドー色)が薄っすらと残るようグラデーションを付けます。因みに下面ベース色は、オリジナル調合色(C1ホワイト:約95%、C2ブラック:約5%)で、クレオスカラーを使用しています。

 上面の中間色の塗装が完了したら、機体上面をマスキングして、機体下面に下面ベース色をパネルラインで囲まれた部分を狙って吹きます。尚、下面色は機体の陰になることから、退色の影響は少ないと判断しリベットラインは無視しています。機体全面の塗装が完了したら、国籍マークや機体番号等のマスキング材を取り除きます。また、塗装のリペイントは、この段階で済ませておきます。

 国籍マークや機体番号等のマスキング材を取り除いたら、メラミンスポンジ等でマスキング塗装で生じた塗膜の段差(メクレ)の均しを行いつつ、全体に付いた塗料のミストを取り除きます。この後、エナメル系塗料でウォッシング(ブラック系+ダーク・ブラウン系の混色)を行いますが、ラッカー系塗膜の研磨により薄くなったトコロから溶剤が浸みて下地のグロスのエナメル系塗料を溶かし出す恐れがあるので、事前に保護のため全体をクリアーコート(スーパークリアー半光沢/C181)しておきます。

ウォッシング拭き取り完了
ウォッシング拭き取り完了

 エナメル系塗料でのウォッシングと拭き取りが完了したら、保護のため全体をクリアーコート(スーパークリアー半光沢/C181)した後、更に上面色部分のみにエナメル系塗料でスミ入れします。スミ入れに使用する色は、タミヤのコクピット色(XF-71)です。はみ出したスミ入れ塗料を溶剤で拭き取った後、保護のため全体をクリアーコート(スーパークリアー半光沢/C181)します。

コクピット色(XF-71)によるスミ入れ

 クリアーコート塗装が乾いたら、各部のデカール貼りを行い、各部のデカールが乾燥したら、クリアーコートにて保護しますが、今回は、次の工程で色鉛筆によるエイジングを施すことから、艶消しクリアー(スーパースムースクリアー/GX114)にてコートします。

各部のデカール貼り完了

 クリアーコート塗装が乾いたら、接着剤の乾燥後、最後の色付け作業の色鉛筆によるエイジングを行います。主に機体上面に生じるひっかきキズや擦れキズを搭乗員や整備員が良く触れるトコロ、滑走時や飛行時の風当たり等を考慮して色鉛筆のグレー色、グリーン色、ブラウン色等を用いて多段階に様子を見ながら書き込みます。

色鉛筆によるエイジング完了
色鉛筆によるエイジング完了

 色鉛筆によるエイジング法について、色鉛筆の定着力は低いので、指等で擦ると色鉛筆は取れたり、薄くなったりします。これを逆手に取り、失敗時は消しゴムを用いて簡単にリカバー出来ることや、綿棒等の用いて色の部分ボカシを行います。作業が完了したらクリアーコートします。今回は、機体全体のヤレ感を醸し出すために艶消し気味にクリアーコート(スーパースムースクリアー/GX114+スーパークリアー半光沢/C181の混色)して仕上げます。

 クリアーコートが乾燥したら、残りの風防や翼端灯全てのマスキング材を取り除き、各部の小物を取付けて最終仕上げを行います。

 事前に仕上げた搭乗員フィギュアを仮セットして、仕上り確認します。完成まであと少し・・・、ごきげんよう。

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