幻のへブミューラー・ビートル(2022年)

作品ギャラリー
VW へブミューラー・2シーター・カブリオレ
1951年 最終生産車(モデルチェンジ想定仕様)

◆作品概要◆
【キットメーカー】グンゼ産業・ホビークラフト部
【スケール】1/24
【車種タイプ】フォルクスワーゲン タイプ14A
【作品の完成】2022年8月

キット仕様(1956年モデル/オーバルウィンドゥ)のセダン・タイプ(4シーター)からカブリオレ・タイプ(2シーター)へ改修。自作パーツとして、リア・フードパネル、幌カバー、後部ラゲッジ・マット、フロント+サイドのガラス、フラワー・ベース、サンバイザー、ソフトトップ・ロック金具、バンブーパーセルシェルフ、フロアーマット、ラジオ・アンテナ、フェンダーミラー、各エンブレム。ディテールアップは、ハンドル廻り、ルームミラー、スピードメーター、アクセルペダル類、ワイパー、ホーングリル、バンパー、フロアーマットの起毛表現、後輪タイヤの自重変形。ホイール・キャップを除くクロームメッキ部分は塗装(但し、サイドステップ部は曲面追従金属シート貼)。ボディ塗装は2トーン基本塗装の上クリアーコート後、塗膜面研磨にて艶出し加工。

 ヘブミューラー社製の2シーター・カブリオレは、カルマン社製の4シーター・カブリオレと共にフォルクスワーゲン社(以下:VW社)が、当時ラインナップしていたタイプⅠ(ビートル)の最上級モデルです。しかし、このモデルの生産開始後間もない時期にヘブミューラー社は、工場内の火災が起因して間もなく倒産したため、総生産数は少なく700台弱に留まりました。よって現在では、超レア・ヴィンテージ・ビートルとして、世界中の空冷VW乗りの憧れの的となっています。何といってもヘブミューラー・カブリオレの最大の魅力は美しいリアフードのラインです。私見ですが、ツートンカラー+ホワイトウォール・タイヤとのセットは非常にCOOLです。

 へブミューラー社は、この2シーター・ビートルの生産を1949年6月から開始しますが、先で述べた様に同年7月23日の工場内塗装部門からの火災影響を引きずり、この後著しく生産能力を落とします。

 そして、1951年には生産台数が僅か1台となり、翌年1952年2月に会社は倒産してしまいます。また、このモデルの生産は、工場内に残った材料でカルマン社に引き継がれますが、車としての性能は、普通のビートルと同じなので、価格帯が近いポルシェ356等の他社の競合車が増えたこともあって市場性は低くなり、遂に1953年2月に生産中止となります。

VWビートル スプリット・ウインドゥのインパネ
※Webサイト:Pinterestより写真引用
VWビートル オーバル・ウインドゥのインパネ
※Webサイト:Pinterestより写真引用

 この経緯からも分かるように、このへブミューラー・カブリオレのベース車となるセダン・ビートルの年式タイプは、1952年にモデルチェンジするまでの最初期モデル:通称「スプリット・ウィンドゥ」となっています。また、モデルチェンジ後の新モデル:通称「オーバル・ウィンドゥ」となる本ベース・キットとは、部分的に各部ディテールが異なっており、特にインパネデザインは一新されてしまいます。(上写真参照)

 ですので、本作品は、想像力を膨らませてへブミューラー社で1951年に生産された最後の1台は、翌1952年のモデルチェンジ・デモ用に披露するカスタム・モデル仕様であったとする想定で製作しています。尚、恐らくこの頃のへブミューラー社は、倒産間際でそんな余裕はなかったかと思いますが、VWビートル史上で最も美しいデザインのモデル車へのオマージュとすべくアレンジしてみました。

 本作品の想定アレンジの方針は、実車のセダン・ビートルのオーバル・ウィンドゥの仕様を踏襲しますが、内外装のカラー・コーディネートについては、当時の組合わせには無い特別色としています。また、1952年から生産された輸出用のエクスポート・モデルの仕様(基本、国内向けのデラックス・モデルと同じメッキパーツの光り物を追加)を盛り込んだ豪華な仕上げとしています。

 正面から観るとよくわかりますが、ビートルのカブリオレ・タイプのフロント・ウィンドゥ枠の形状は、セダン・タイプと異なり角ばった形状をしています。またフロント・ガラス面について、この時代のモデルはフラットであるトコロが特徴です。因みにビン底の様なヘッドライトは、このベース・キットの特徴なので、キットの素性を活かすべく?手を加えずそのまま組み込んでいます。

 そして、側面から観るとこの車の美しさが良くわかります。カルマン社製の武骨な4シーター・カブリオレと異なり、この2シーター・カブリオレは、ソフトトップをたたむと、ボディ内に完全収納出来ますので非常にスマートなデザインとなります。因みにベース・キットでは、各タイヤとフェンダーホイール・カバーとのクリアランスが、不揃いでしたので、盛った削ったの調整改修を行っています。あと手前味噌ですが、内装色とシンクロするタイヤホイールの"赤"の差し色がお気に入りです(笑)。

 本作品におけるボディ・カラーは、ライトブルー(Mr.カラーのRLM78ライトブルー)とアイボリー(フィニシャーズカラーのアイボリー・ホワイト)との2トーンとすることで、ヴィンテージ・ビートルの雰囲気を醸し出す様に色彩設計してみました。因みにこのライトブルーは、WWⅡ期のドイツ空軍の制式迷彩色です。因みにボディ塗装の研出し方法は、カーモデラーさん達の定番?手法で、Mr.ラプロス(ミスターホビー)を使用し、#4000→#6000→#8000の順に番手を変えて研ぎ出し、最後にセラミックコンパウンド(ハセガワ)にて磨き出して仕上げています。あと、タイヤ・ホイールキャップを除くバンパー等の外装金属メッキ部分については、キット・パーツのゲート処理の都合、キットのメッキを落とした後、主にガイヤのプレミアムミラークローム(GP-08)にてメッキ塗装としています。

 フロントガラスは、マスキングして枠シールゴムを塗装にて行い、アルミトリム部は、洋白線を曲げ加工し、接合端部をハンダ止めし、その上にジュラルミンフィニッシュ(ハセガワ・トライツール)の細切りを貼って巻いてジョイント表現し、ボディ塗装後にフロント・ウィンドゥ枠内に嵌め込んでいます。サイドガラスは、マスキング後にクロム・フレーム部分の下地にサフェーサーを吹いて厚みを持たせメッキ塗装にて仕上げた後、事前にドア部に仕込んだスリット部へ嵌め込んでいます。

 当時オシャレ・アイテムとして流行っておりましたインパネに取付けるフラワーベース・・・。所謂、一輪挿しの陶製花瓶は、プラ棒からの削り出しにて自作しています。因みに一輪挿しは、カスミソウの着色ドライフラワーです。また、インパネ・ノブ類も実車の雰囲気に合わせて、キットのモノより大型化してプラ棒からの削り出して自作しています。そして、フラワーベースに続くオシャレアイテム第2弾として、インパネ下部に設けられたバンブーパーセルシェルフ(竹編み製の棚)も自作しています。これは、本体枠をなましアルミ線から切り出し曲げ加工し、底網は、100均ショップの真鍮製茶こしの網部分をばらして切り出して製作しています。

 フロント・ウィンドゥ枠内部に付くルームミラー+サンバイザーも自作しています。ルームミラー本体こそキット・パーツを加工して使用していますが、これ以外は、真鍮線と真鍮パイプ、及びサンバイザーを真鍮板とプラ板の組み合わせにて製作してます。フェンダーミラーもキットに付属されていませんので自作となります。一応、当時の習い?に従ってドライバー側のみの設置としています。ミラー本体の材料は、WAVE社のH・アイズ(クリアー)5mmΦで、そのままでは厚みがあるので、径が変わらない程度で薄く削って使用します。ミラー・ブームは真鍮パイプと真鍮線の組合せとし、ボディ側とミラー本体側にピンバイスで孔開けし瞬間接着で接着し組立てます。因みに各ミラー面には、塗装後にミラーフィニッシュ(ハセガワ)を貼り仕上げています。

 キット・パーツのワイパーは、その形状からは、お世辞にもワイパーとして作動するモノとは思えないので、ほぼ自作とします。キット・ワイパーの基部を残して切り捨て、基部にはヤスリ等でそれらしくテーパーを付けます。ワイパー・ブームを真鍮線で、ワイパー部分のフレーム、及びゴムベラをプラ板から切り出して断面をT字型になる様に接着し、各部をピンバイスで孔を開けて瞬間接着剤で接着し組立てます。また、ラジオアンテナは、キットに付属していませんが、実車には配備されています。これをセットするとリアリティがアップするだけでなく、これまたカッコよくなりますので、自作します。本体の材料は真鍮パイプと真鍮線です。基部にはプラ棒、先端部はプラ棒をそれぞれテーパー掛けて切り出し、ピンバイスで孔開けし瞬間接着で接着し組立てます。

 フロントのホーンホール・グリル(ライト下の小判状のモノ)も改修を行っています。ベース・キットのフロントのホーンホール・グリルは、ボディと一体モールドとなっており、小判と言うより大判なので、小型化と立体化の改修をおこないます。まず、フロントのホーンホール・グリルは、銅パイプを潰して楕円形に加工してグリルの枠にし、プラ板を積層接着してグリル状にしたモノを切り出して中に仕込んで自作します。次にキットのフロントのホーンホール・グリルの凸モールドを削り取り、正しい位置を実車写真を参考に割り出して孔開けし、自作したホーンホール・グリルのパーツを仕込みます。

 インパネのスピードメーターは、立体化ディテールアップを行っています。まず、キットのインパネのスピードメーター部分をくり抜きます。次に改修スピードメーター本体の製作ですが、メーター本体となるバーニア系のアフターパーツの底に縮小出力したメーター写真を貼り、中心部に貫通孔をピンバイスで開けて、志賀昆虫針を通してメーター軸にします。また、メーター針にはプラ線を仕込んでいます。仕上げにメーターガラスを透明プラ板から切り出して、本体に接着します。あと、リング・モールは、洋白線を曲げ加工し、ジョイント部をハンダ付けして完全リング化し整形しています。

 後部のラゲッジ・スペースは完全自作となります。実車写真を参考資料にして、各部の相対比率から床立上り仕切り板の位置と高さの割り出し、及び天板仕切りと跳ね上げ式仕切りマットの位置と厚さ・高さの割り出しにて、プラ板の切り出し・接着にて、そして各部の補強も忘れずに構築しています。また、跳ね上げ式仕切りマットは、各厚のプラ板の組み合わせにて製作しています。あと、製作上のポイントとして、内装部分とボディ部分との隙間が目立たない分割を考慮して、幌部骨組み収納カバーは、ボディ側に固定しています。

 幌カバーは、プラ板にて自作しています。また、塗装工程において、キャンパス布特有のフラット感を出すために、下地塗料に缶入り歯磨き粉(モスカ歯磨)をフラットベース代わりに混ぜて筆で塗装し、ほわっととした質感の再現を図っています。更に上塗りは、普通にエアブラシ塗装して、艶消しクリアーにてコートの後、ホワイトのエナメルにてウォッシュ。拭き取りをランダムにして表面の微妙な凹凸を表現してみました。また、幌カバー留め金具も虫ピンを流用して自作しています。

 ハンドル部分の中央にあるホーン・ボタンのウォルフスブルク・エンブレム、そしてフロントボンネットのウォルフスブルク・エンブレム、及び右側面の前側クォーターパネルのへブミューラー社・エンブレムは、当然キットに付いて無いので全て自作しています。

 空冷ビートルのフラット4・エンジンは、リアに搭載されていますので、フロント・タイヤに比べて、リア・タイヤに車重が掛かっています。実車でもリア・タイヤが自重変形していることが確認できますので、模型における"重さ"表現として自重変形加工をしています。工作方法は、タイヤ接地面にカッターで切り込みを入れて、プラ板で作ったクサビを差し込んで意図的に変形させています。

 本作品の2シーター・カブリオレ・タイプと一般的なセダン・タイプ(1966年モデル/タミヤ)との外観比較です。へブミューラー・ビートル独特の流れるような美しいヒップラインがよくお分かりいただけるかと思います。

 そして、もし実現していれば、ドイツ国内外でのデモンストレーションを行っていたはず・・・、を想定したスナップ写真のでっちアップです。

Fine

2022/09/05 製作記事~1/24 幻のへブミューラー・ビートル(グンゼ)~#01
VW へブミューラー・2シーター・カブリオレ 製作記まとめ 飛行機モデルの製作における、製作技術の幅や表現方法の奥行の拡張を目的に、不定期ですが異業種モデリングを行っています。今回のお題は、自動車モデリングです。若い頃は空冷VW乗りであった...

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