怪鳥ホルテン~三“味”一体~(2022年)

1/48スケール
ドイツ空軍 高々度戦闘爆撃機
1945年 想定量産型(試作機「HoⅨV3」ベース)

◆作品概要◆
【キットメーカー】造形村
【スケール】1/48
【機種タイプ】ホルテンHo229
【作品の完成】2022年1月

メーカー・アフターパーツ(コクピットパネル、主翼機銃、ピトー管、機体下部エアブレーキ、主翼ドラッグラダー類)に置換え。コクピット内の射爆照準器のディテールアップ。外装クリアーパーツの透明度アップ研磨。機体下面内側の木目デカール貼り。塗装は外装迷彩は多重グラデーション塗色、外装木目部分は木目調マスキング・エッチングシート使用。国籍標識は塗装、コーション・ステンシル類はデカール使用。

「プロジェクト3,000」・・・それは、1943年にドイツ空軍総司令官ヘルマン・ゲーリングが掲げた「時速1,000Km/hで重量1,000Kg(1トン)の爆弾搭載し、距離1,000㎞の飛行可能な爆撃機を作る」と言う「三つの1,000計画」に基づき、本機は奇才ホルテン兄弟により開発された全翼型戦闘爆撃機です。

ホルテン兄弟は、幼い頃からグライダーや全翼機に興味を持っており、周囲の支援を得ながら1931年に全翼型のH1(グライダー)を初飛行を成功させます。1936年以降は軍に入隊しながら全翼機の設計・製作を継続し、次々と試作機を生み出していきます。

1943年の「プロジェクト3,000」参画をきっかけにジェットエンジン搭載の全翼機開発を本格的に取り組むことになり、試行錯誤の末、良好な結果を残すことになる試作機「HoⅨV2」が1945年2月2日に初飛行し、「Ho229」として制式されることになります。その後、「HoⅨV2」の改良型となる 「HoⅨV3」を量産機ベース想定として開発が進められていましたが、終戦により未完に終わります。開発計画においてHo229は、戦闘爆撃機型の他、昼・夜間戦闘機型や複座型等の派生型も開発予定でした。

本機の機体構造は、アルミニウム等の戦略物資を多用しないように配慮し、当時主流であった全金属製モノコック構造ではなく、鋼管のフレームに接着剤でベニヤ板を組み付けるといった簡易な構造で製造されており、また外装塗料には炭素粉を使用する等で、世界初の本格的なレーダーステルス機能も持ち合わせています。

本機の上昇限度高度は15,800㎞とされていますので、最終的には与圧コクピットを採用する予定でしたが、初期テスト機では、与圧パイロット・スーツが用意されていました。尚、その形状は潜水服か宇宙服の様な頑丈なフルフェイスのヘルメット付きで、胴体部には与圧用のホースが接続されていました。

本キットは、造形村における比較的最近の開発キットで、本1/48スケールの他に1/32スケールもラインナップされています。1/48スケールは、1/32スケールの単なるスケールダウンではなく、組み易さも考慮に入れてパーツ割が再設計されていますが、タミヤやハセガワと異なるアプローチで実機に基づいた構造やパーツ割を再現するチャレンジ精神旺盛なキットとなっており、初めて製作される方は戸惑い感を持たれるかもしれません。(自身も毎回の体験から・・・。)

本作品の仕上りコンセプトは、この素晴らしいキットの持ち味を生かすべく、外装迷彩・外装マテリアル・スケルトン(内部メカ)の三つの要素を同時に一つにまとめて表現した「三位一体」・・・、もとい「三“味”一体」仕上げとして製作しています。機体下面は全外装塗装ですが、上面の塗分けについて、外装迷彩塗装の塗分けを下敷きにして、内部メカ→外装マテリアル→外装迷彩塗装の階層順に、それぞれが接する様に配色配置しています。尚、クリアーパーツの研磨は透明度アップ後、表面保護のために光沢 スーパークリアーⅢUVカット(GX112)をコートし、更に仕上げ研磨しています。

キットにおける内部メカの再現度は、ご覧の通り半端ではありません。しかし、当時の最新技術であるジェット軍用機の内部構造が、ひと昔(第一次世界大戦)のモノと同じ鋼管フレームで、外装がベニヤ合板で覆われている機体なんて、何かしらの違和感を感じてしまいます。

キット外装は全てクリアーパーツで、内部メカをスケルトンに出来るようになっていますが、本作品の試みでは機体下面は全て塗装しますので、機体下面の内面にマテリアルを再現すべく、木目部分となる部分(といっても、ほぼ全面・・・)に市販されている木目デカールを貼ります。が、キットの下面パーツ内面には凸フレーム・モールドが彫刻されていますので、木目デカールの切り貼りや貼り分けを行っています。以下に作業内容の概略を記載します。
【作業内容】
①パーツがクリアーである事を利用し、外装パネルラインを内面へスジボリ転写。
②下面パーツの全面サフェーサー吹き
③下面パーツの内面へ、タン色(C44)を塗装(木目デカールの下地色になります)
④艶有りクリアーコート(木目デカールの密着性向上のため)
⑤木目デカール貼り(木目パターン2種を使用)

主翼の製作にあたり、主翼内部に納める燃料タンクを先に仕上げることになります。キット組立て説明書ではシルバー色指定ですが、主翼内唯一の臓物なので他とのバランスを考慮して少し塗装をアレンジしてみました。実機は試作機なので手作業により燃料タンクが仕上げられた風に、外装金属表面の成形時にできた凹凸面をノッキング・ブラシ塗りにて表現してみました。

【ノッキング・ブラシ塗り】
【塗装方法の解説】本サイトの作品において、主に機体ジュラルミン素地仕上げ部分に用いている塗装方法をノッキング・ブラシ塗りと称しています。特に大戦末期の日本軍機に多く見られる無塗装面の再現を図っています。概要は、下地となるシャドー・シルバーを...

因みにこのキット、ブレーキホースに加えて降着装置の引込みフレームまで完全再現されています。特に前輪降着装置は、胴体フレームの奥深くまで組込まれているので、外装パネルを取付ける前に降着装置を胴体フレームに取付けておかないと、後付けは困難になります。また、車輪タイヤの自重変形は底面をヤスリで削っただけですが、キットの構造上、後輪は回転なしの固定付けなので、前輪をセットした仮組みにて接地面を割り出しています。

このキットにおける主翼フレーム・パーツは片翼でほぼ2パーツで構成されており、また胴体フレームとの接続も実機と同様に、上下の主桁で計4か所のピン固定にて再現されています。ヨンパチなのにこのディテールは驚嘆の域です!。

ターボジェット・エンジン(ユンカースJumo 004B-2)は、素組でもこのディテールです。塗装配色は基本、組立説明書に準じていますが、シルバー色においては、実物の使用想定を考慮?して5~6色(塗料+銀サフ研磨仕上げ)を使い分けています。特にエンジン後半部の排気ノズル部分は高熱になるので、全体的に白っぽくムラ焼けしているのをノッキング・ブラシ塗法ベースで表現してみました。また、排気口廻りは、タミヤのウエザリングマスターを用いて高温焼けを控えめに施しています。あと、エンジン中央部の黒色部分には、ガイヤカラーのプレミアム・ブルー・ブラックを使用しています。この色は黒から青へ見る角度によって変わるパールカラーですが、艶を抑えると上品な黒色に見えるので、なかなか面白い色です。少し値が張りますが。

計器パネルは、私の好みでメーカーアフターのエッチング・パーツを使用していますが、キット・パーツには、精密な彫刻が施されており、計器メーターもデカール2種類(計器盤一体タイプと各メーター別タイプ)も付属する、至れり尽くせりの内容となっています。

あと、ディテールアップとして、シートベルト(ファインモールド製・エッチング)と計器メーター裏の配線(リード線を解した極細銅線にて)を追加しています。

この他のコクピット内のディテールアップとして、射撃照準器の照射レンズの再現と照準ガラス部分を薄いプラ板(0.2mm厚)に置換えています。

主翼に装備されるMK103機関砲(口径30mm)と弾倉の塗装について、組立て説明書ではガンメタリックでの塗装指示で一般的なのですが、黒染鉄が鈍く光るリアルな「銃」の仕上り感には今ひとつですね。そこで、私が常用している方法を下記に紹介します。

【銃器等の塗装法】
塗装法の解説銃器(機銃や機関砲)等の塗装について、組立て説明書ではガンメタリックや黒鉄色等での塗装で指示されているのが一般的です。しかし、黒染鉄が鈍く光るリアルな「銃」の仕上り感には今ひとつですね。そこで、私が常用している方法を紹介してみた...

機体下面部分でも省略されがちな脚引込み廻りの降着構造を内部メカを活かして、しっかり再現されている優れものキットです。

Fine

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