日本の航空遺産機~立川一式双発高練~【月刊MA2021年12号掲載】

1/72スケール

帝国陸軍 飛行第38戦隊

昭和18年9月 能代飛行場

◆作品概要◆
【キットメーカー】スペシャル・ホビー
【スケール】1/72
【機種タイプ】立川 一式双発高等練習機 丙型
【作品の完成】2021年09月

操縦室内のディテールアップ(シートベルト追加)。乗員室窓のディテールアップ工作。主脚収納廻りのディテールアップ。全面のスジ彫直し。プロペラの脱着化の追加工作。排気管の開口加工。前照灯のディテールアップ。編隊灯類の追加と透明パーツ化工作。自作金属部品(アンテナ支柱、ピトー管)、アンテナ線(極細テグス)の追加。機体は多重グラデーション法(単色)により塗色。国籍標識、機体胴体の帯、垂直尾翼上部の帯、味方識別帯は塗装。

本作品は、模型誌「月刊モデルアート」の作例として2021年12月号の「NEW KIT REVIEW」に掲載されています。本キットのレビューや製作にかかる工作内容・塗装工程については、是非誌面をご覧下さい。

1940(昭和15)年、本機は陸軍より九五式二型練習機の後続機として、多目的に使用できる双発高等練習機の試作指示により立川飛行機で開発され、翌1941(昭和16)年に制式採用となりました。

立川飛行機では、初の自社開発による全金属製双発機でしたが、採用エンジン(日立ハ13甲/空冷9気筒エンジン515HP×2)の信頼性が高く、機体の耐久性に優れ、操縦視界が良いため操縦性に優れ、また、機内も多目的な訓練対応の可能な広いスペースが確保されている等の使い勝手に優れた傑作機となりました。

そのため複数の型式となる甲型(操縦・航法訓練型)、乙型(通信・爆撃・射撃訓練型)、丙型(人員輸送型)、丁型(対潜哨戒機型)で生産され、連絡機としても使用されました。尚、甲型と丙型は武装なし、乙型は7.7mm旋回機銃4丁(射撃訓練時)、15kg訓練爆弾10発(爆撃訓練時)。丁型は対潜探知機KMXを搭載していました。

実機情報についてですが、本機の現存機は国内外で3機が確認されています。国外保管の2機は胴体のみですが、国内保管の1機は、当時陸軍飛行第38戦隊に所属の機体で、1943(昭和18)年9月27日、操縦訓練と資材運搬を兼ねて秋田県能代飛行場から青森県八戸飛行場へ向かう途中、エンジントラブルにより同県の十和田湖に不時着水し水没したものです。

その後、2012(平成24)年8月に機体の引き上げされますが、水深57mの湖底に約70年間水没していたことによるジュラルミンと鋼材で構成される機体、及びエンジンの腐食進行が原因で、引き上げ作業の過程で胴体2か所が破断、2基のエンジンが機体から分離することになりますが、外板には穴が空いている箇所や操舵面に貼られた羽布は失われているものの、機体内外には運用時に塗られていた塗色や日の丸の赤色塗装、所属部隊を示すマーク、注意書きなどが残っている等、オリジナルの状態が比較的よく保たれており、使用当時の状態が確認できる極めて貴重な航空遺産となっています。

この国内唯一の現存機は、操縦席内に残っていた銘板などから製造番号は5541で1942(昭和17)年に製造された甲型であることが判明し、引き上げ後は2012(平成24)年11月より、青森県立三沢航空科学館にて展示されていましたが、同施設での長期的な管理保存の困難さから、2020(令和2)年12月に立川飛行機を前身とする立飛ホールディングスへ譲渡し、管理保存の引継ぎを行うことになります。尚、三沢航空科学館での展示は、2020(令和2)年11月8日で終了しています。

また、本作品において紙面の都合上にて機体の乗員室窓廻りのディテールアップ工作が割愛されていますので、以下に補足解説します。

キットパーツでは機体側の窓枠にはめ込む様に取り付ける納まりなので、ガラスの仕上り面が揃いにくく(光が反射すると不連続部分が顕著となる)、かつ接着強度が確保しにくい(製作時の取り回し中やマスキング作業で取れてしまう可能性あり)欠点の改善策として、窓廻り部の機体外面を彫り込んで外から覆う様に透明プラ板を貼付けて周囲に瞬間接着剤を塗り込んで接着する工作を行いました。

さらに機体と透明プラ板(事前に窓の大きさに切ったマスキングテープを貼って窓ガラス部分を保護)との間に生じた隙間を瞬間接着剤を盛って埋めて、サフェーサーを吹いて更なる段差を埋めます。乾燥後に削り過ぎないように注意しながら金属ヤスリ(細目)やスポンジ・ヤスリ等で、段差が無くなるまで数度、この工程を繰り返します。

更なる詳細については、下の製作写真付きの解説ページがありますので、そちらをご覧下さい。

機体キャビン窓廻りのディテールアップ
ディテールアップの目的と効果  特に小スケール・キットの機体キャビン窓ガラスのクリアーパーツは、プラ成形上の都合で厚みや表面平滑度の点で完成後のスケール・アウトしてしまうことが多いです。また、機体への取付け後の強度に不安が残ったり、機体外面...

本作例機は航空史上は有名であるにもかかわらず、飛行機模型の世界ではマイナー機のためネット上でも参考となる実機詳細部分の写真や資料が乏しく、製作にあたっては頭を悩めるところが多々ありましたが、得られた情報からの考証にて可能な限り細部の再現を試みました。

Fine

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