"青竹色"ってどんな色?
特に日本軍機のキットを製作する際、機内色の指定で青竹色なる塗色があります。模型用塗料のMr.カラーの色番では、No.57(青竹色)が該当するのですが、色味的にはメタリック・ブルー系でお世辞にも青味のある竹の色には見えません。そもそも、青竹色たる色は、どの様に規定されているのか調べてみると、日本の伝統色であり、かつJISの色彩規格では「やわらかい青緑」とされています。一般的には青みがかかった緑色をさす染色の色のことで、成長した竹の幹の色から採られた名称とされ、若竹色より色が濃く力強さがある色彩とされています。
なぜ、機内色は"青竹色"だったのか?
日本軍機の機内色である「青竹色」について、2022年1月に大日本絵画より出版された資料本「日本海軍機の塗装・ソコハ何色?」(以下、ソコハ何色?)で触れられていますので紹介します。「青竹色」とは、当時の日本海軍規定色でE4(淡青色透明色)に該当し、「色味としてクリアーブルーで、メタリックカラーではありません」とされています。つまり、Mr.カラーNo.57(青竹色)は、正しくは「青竹色」ではないことになります。
"青竹色"塗料は防錆塗料
この「青竹色」なる塗料は、そもそもがジュラルミンの上に塗布する防錆塗料です。顔料が「亜鉛末」と言う防錆性質をもったもので、粉末状では灰青色をしているそうです。これをクリアー塗料に練り込んで塗料としています。塗料色は暗青色系ですが、塗料として隠ぺい力が低いので、塗るとクリアーブルーになってしまいます。ですので、透けたジュラルミンの銀色下地の影響により、メタリックブルーに見えるとのことです。このことから考察すると、資料本「ソコハ何色?」では、塗料そのものを差して「青竹色」と説明しているのに対し、Mr.カラーNo.57(青竹色)は、下地ジュラルミンの銀色まで含めて「青竹色」としている違いとなります。よって、正しい色名では前者が正しいですが、模型の塗装手間(下地:シルバー+コート:クリアーブルー)を考えると、後者も便宜的に「青竹色」としても問題ないのではないでしょうか。ただし、前提・由来を知らないと混乱しますが・・・。
更に、このクリアー塗料は経年劣化により黄変しますので、段々とメタリックグリーン調になって行くそうです。ですので、工場ロールアウト時はクリアーブルー(見た目:メタリックブルー)で、各基地運用期間に応じで変色し、年期が入ってくるとクリアーグリーン(見た目:メタリックグリーン)化していた様です。模型製作する際も、この時間経過による変化を取り入れて表現すると趣きが出てきますね。
あと「青竹色」のネーミングについて、何時頃から使われていたのか不明で推測の域を出ませんが、既に当時から使われていたと仮定すると、工場内の作業員達の間で便宜上、誰が言い出したかいつの間にか通称として定着したのではないかと考えます。また、当時の塗料色で青系色は希少であったため、「〇〇青色」とした場合で発生する間違いリスクを低減するために、イメージ近似色として日本の伝統色の名称「青竹色」としたのではないでしょうか。
最後に独断・推測も交えて、日本軍機の機内色に使用された「青竹色」について、下記に見解を纏めてみました。
【機内色:青竹色の見解】
①「青竹色」はあくまで通称であり、正しくは日本海軍規定色におけるE4(淡青色透明色)。
②ジュラルミンの上に塗布する機内用の化粧防錆塗料。
③色味としてクリアーブルーで、メタリックカラーではない。
④ジュラルミンの銀色下地の影響により、塗装後はメタリック色に見える。
⑤経年劣化により黄変する。(クリアーグリーン化)
Fine







コメント
はじめましてこんにちは。
独断・推測も含めてとても興味深く、良い勉強になりました。
青竹色、色々と調べてジュラルミンの防錆塗料であることは分かっていましたが、色の組成や経年変化まで書いてあるのは初めて見ました。
初期F15の機内や空中給油口、なんで青竹色?と小さいころから疑問でしたがやっと納得がいきました(^^)
「カッコ悪りぃ~色!」って思いながら塗ってた、幼いころの自分に教えてあげたいです。
MAZZくん 様
コメントを頂きありがとうございます!。
青竹色の防錆塗料は、旧日本軍での独特の運用の様ですね。
塗装にかかる規定が海軍にある様に、基本は海軍機に使用された防錆下地塗料ですが、
陸・海軍機を製造している中島飛行機では、戦争末期の塗料資材節減のため、陸軍機の機内用塗料として使用しています。
恐らく、青竹色の防錆塗料は、材料コストが安価だったのではないでしょうか。
当時の外国で使用されていた防錆塗料の中に、青竹色の塗料が存在し使用されていたのかは不明ですが、
日本機の様にそのまま仕上りも兼ねていた例は、今のところ見られませんので、独自開発・生産したのかもしれませんね。
70~80年代に国内模型メーカーからリリースされたキットの塗装説明書では、操縦室内や主脚格納庫内は、ほぼ全て青竹色の指示でした。
おっしゃる通り、当時少年であった私も「変な色」と思って、しっくりこない印象を今でも覚えています。