三菱 零式艦上戦闘機21型 製作記まとめ(主に工作編)
前回に引き続き、主翼製作にかかる改修等について解説します。また、今回で主翼製作の作業は完了となりますので、次はお待ちかね(?)の操縦室内製作の解説へ移ります。尚、操縦室の製作にあたっては、キット付属のエッチングパーツ(以下:EP)を積極的に使用しています。
主翼「ねじり下げ」の再現検証
本キット主翼パーツは、従来キットと同じモナカ構造なので、主桁部分に主翼断面を矯正するプラ板を入れても、この部分以外を指で挟むとベコ付きが残ります。また、自然な矯正曲面を作る上でも隙間に詰め物が必要となります。本作品では、この詰め物にエポキシパテを使用しています。先ず、主翼の上下パーツを接着する前に、エポキシパテの小片を概ね均等に分散設置します。この時、左右の翼の重さを同じにした方が、後々都合が良いのでエポキシパテは左右で同じ分量で左右対称に配置します。次に主翼上パーツをこの上に被せて主翼下パーツとの隙間が無くなるまで指で均等に力を加えて圧着していくのですが、局所的に力を入れ過ぎて面が凹まない様に気を付けると共に、左右の主翼が同じ形状になる様に調整と確認を繰り返します。最終的に主翼のカタチが整ったら、プラ用流し込み接着剤にて接着します。
ここで漸く主翼パーツが完成しましたので、一連の改修結果の検証を行ってみますが、その前に前回の製作記における概要説明のおさらいをしておきます。実機は主翼前縁の「ねじり下げ」ラインとそれに連なる主翼上面の変曲部分あるテーパー付き緩凸状の3次元曲面との相乗効果で、零戦特有の「垂れ下がった感じの主翼」となっています。本キット主翼パーツでは、前縁部の「ねじり下げ」ラインは再現されているものの、それに連なる主翼上面の変曲部分あるテーパー付き緩凸状の3次元曲面は再現されていません。この効果を「らしく」再現すべくキット主翼パーツの前後桁部分へ補正プラ板厚1.2mmを挟み込んで上下パーツを圧着しました。
前置きが長くなりました。結果は上写真の通り、思惑通りに金定規の50mm目盛り辺りから翼端(写真右側方向)にかけて隙間が出来て、主翼上面の垂れ下がりが再現できました。
主翼の翼端灯のディテールアップ
主翼の翼端灯のプチ改修の工作です。キットではクリアーパーツで用意されている主翼端灯ですが、ピンバイスにて途中まで孔開けすることで、内部に電球に見立てたモールド表現が簡単にできます。
上写真は0.4mmΦのドリルを使用して仕上げていますが、最初はこれより小さな径で先行して孔を開けておいて、これをガイドとすることで工作精度を確保します。
補助翼と昇降舵の取り付け補強
補強工作は完成後は目立たない地味な作業であるものの、工作精度を要求されるややレベルの高い工作です。しかし、今後の作業上の取り回しや完成後の強度保持に効果がありますので紹介しておきます。本キットでは補助翼、昇降舵、方向舵を別パーツ化されています。これにより機体に多様な表情を付ける事ができるのですが、同時にほぼイモ付け接着なので一体化キットと比べて強度面での低下は否めません。よって、在来工作ですが、ピンバイスで孔開けし、真鍮線(0.4mmΦ)を通し、瞬間接着剤による接着固定を加えて補強を行っています。
本作品では、補強に使用する真鍮線は、接着剤の付着力の加減から0.4mmΦを最小としています。また、真鍮線を使用する際は、その効果を最大限に活かすべく、必ず表面をサンドペーパー等を掛けて錆・汚れ等を除去し、接着強度を確保することが工作上の重要なポイントとなります。
操縦室内のディテールアップ工作
機体全体の外回りの製作を概ね終えましたので操縦室の製作に入ります。本キットでは専用のカラーEPが付属しています。使用の際は非常に細かいパーツが含まれていますので、作業中の紛失に十分注意が必要です。尚、EPに置き換えを前提に先行してキットパーツのモールドを削り取る必要がありますので、塗装前に全ての対象モールドの除去作業を終えておきます。
作業手順を事前に考えて、キットのプラパーツをランナーから切り出し、組立て・接着を終えた後、先ずは座席廻りのディテールアップとして、お約束?の座席高さ調整紐を真鍮線0.3mmΦで追加とその吊り滑車(キットの位置では少々ズレていましたので作り直しています)をプラ板(0.2mm厚)からポンチ(1.2mmΦ)で切り出してディテールアップ、及び座席シートの座布団(落下傘)を積層プラ板から切り出して整形し追加しています。
続いて座席高さ調整レバー基部とフットバーのブレーキペダルは付属のEPを使用しています。因みに精度と強度を勘案し、フットバーのブレーキペダル軸は真鍮線(0.5mmΦ)に、その軸受けは真鍮パイプ(外径:0.7mmΦ)に置き換えています。尚、このEP製ブレーキペダルに置き換えたことにより、これが床面に干渉しパーツ全体が浮いて床面との隙間が生じたため、そのスペーサーとして、切り出したプラ板0.5mm厚を挟んで高さ調整しています。
あと、このキットで注意する点があります。キット組立説明書の「C」図で、EP置き換えのため、操縦室床面(パーツ:D33)の一部モールドを切り取る指示がありますが位置誤りです。正しくは、指示対象部分には手を加えずそのままとし、その部分の直ぐ前にあるモールドの突起部分(エッチング製のスイッチに置き換えるため)を削り取るのが正しいです。私も気づくのが一瞬遅くカッター刃を入れてしまった後だったので、改めて削り取った上で再生(写真:座席シートの右側の白プラ部分))しています。メーカー側の校正ミスの様ですね。
本キットの操縦室内の両壁部分モールドについて、従来のキットと異なり一部別バーツとなっています。下写真では仮置きにて一体の様に見えますが、本製作記の一番下とその上に掲載している写真の示す様な構成にて機体胴体に納まります。尚、ここでのディテールアップは、操縦室内壁の右側にあるレバー・モールドを削り取り、プラ棒0.5mmΦ(エバーグリーン社)に置き換えています。尚、レバーノブ部分は、プラ棒の先部分をライター等であぶって、プラ材の熱による収縮性質を利用して加工しています。
操縦室内の塗装仕上げ
操縦室内の基本塗装(Mr.カラー:コクピット色/三菱系 No.126)は、定番のワンウェイトーン塗りです。本作品は空母搭載機で仕上げる予定ですので、バリバリの稼動機でありながら、メンテの行き届いた清楚な感じを表現すべく、仕上げは陰影の濃淡を付けたベース塗装の上に薄めたエナメル塗料の艶消しブラックでウォッシングのみ行っています。また、キット付属のカラーEPの色味と塗装色味とは概ね同じ感じなので、製作記:零戦22型甲(タミヤ)で行ったハイライト塗装もオミットしています。
各パーツの取り付け・接着を終え、室内全体の基本塗装→細部の部分塗り→EP取付け作業を経て、半艶クリアーコートを行っています。幸運にも細かいEPの異次元空間?への紛失事故はありませんでしたが、パーツ番号の見誤りで座席右側にある着艦フック離脱レバーEPを間違った加工にてお釈迦にしてしまい、真鍮線を加工して自作部品に置き換えるリカバーを行っています。
参考までにシートベルトEPの取付けポイントについて、のっぺりしないように所々をたわましたり、浮かした方がリアルに見えます。座席シートの座布団(落下傘)について、大戦中は、常時座席に設置式の落下傘(搭乗者用九七式)が常備されていたので、茶系色(資料本「ソコハ何色?」P.44参照)で塗装しています。
それから、このEP計器盤はメーター部分にガラス表現の艶有クリアー加工が施されています。最近のカラーEPは至れり尽くせりですね。ですので、全体の艶を整えるためのクリアーコートを吹く場合は、計器メーター・ガラス部分のマスキングを忘れずに。
今回はこの辺で、ごきげんよう。
コメント