岐阜かかみがはら航空宇宙博物館所蔵機
2021年3月 岐阜基地
◆作品概要◆
【キットメーカー】ファインモールド
【スケール】1/72
【機種タイプ】航空自衛隊F-4EJ改 #07-8431
【作品の完成】2024年2月
【外装工作】
・全面のスジ彫直し、全面のビス、クイックファスナー打ち直し。
・市販アフター部品(ピトー管、パネルライト)置換え。
・自作部品(ライト類のクリアーパーツ)置換え
・キャノピーは閉状態。
・燃料タンクは展示機と同様両翼のみ設置。
【内装工作】
・基本素組み、各部プラ材・真鍮線にて内部補強。
・アフター部品(シートベルト、バックミラー)追加。
【塗装全般】
・本体塗装は基本迷彩を多重グラデーション法(カスケード塗り)をベースにより塗色。
・機体全体のリペイントや退色感をエナメル塗料にて控えめウエザリング(展示機イメージ)。
・機体胴体後部の赤帯は塗装、その他はデカール(キット付属品)を使用。
本機は、アメリカ合衆国の航空機メーカー:マクドネル・エアクラフト社(その後マクドネル・ダグラス社を経て、現在のボーイング社が吸収合併)が、1962年にアメリカ海軍初の全天候型双発艦上戦闘機として開発した艦上戦闘機です。
大型の翼と高出力のジェットエンジンを双発装備して当時としては大きな搭載量を特徴とし、アメリカ海軍をはじめ、多くの国の軍隊で採用されました。尚、60年以上経った現在(2024年)でも、改修を重ねて韓国、ギリシャ、トルコ、及びイランの空軍他で運用されている優秀機でもあります。愛称はファントムII(Phantom II)です。
我が国における本機導入の検討は、1966年(昭和41年)に遡ります。当時、航空自衛隊へ配備されていたF-86Fの後継機種として、F-4E(アメリカ空軍仕様)を日本での運用に不必要な装備の除去とデータ・リンクを搭載して、要撃戦闘機タイプに改修したF-4EJ型を設定し採用しました。
1971年(昭和46年)7月に最初の2機(1・2号機)が、完成機としてマクドネル社セントルイス工場から輸入され、続く11機(3~13号機)分は部品で輸入し、国内の三菱重工業の工場でノックダウン生産しました。それ以降の機体127機(14~140号機)分は、ライセンス生産により国産機として生産され、1981年(昭和56年)5月20日に最終140号機 (#440) がロールアウトします。
加えて、1974年(昭和49年)から偵察型のRF-4Eを14機輸入しており、1981年(昭和56年)の生産終了までに日本が調達したF-4の総数は154機となる。因みに、アメリカ本国以外で、本機のライセンス生産が許可されたのは、日本が唯一の国です。
本機の設計ベースが、艦上機であるために陸上機としての運用面で問題となった大きな構造重量(着艦の衝撃に耐えるため、足周りを頑丈化)による武器等の搭載量の制限にかかることで批判があったものの、航空自衛隊における運用は、F-15Jが導入されるまで主力戦闘機として防空任務を担当しました。
また、本機の運用期間中である1976年(昭和51年)には、ソ連のミグ25の領空侵犯による同機パイロットのベレンコ中尉亡命事件が発生し、本機が、その際に飛行中のミグ25の侵空を発見できなかった事から、低空目標の探知能力(ルックダウン能力)が不足していることが明らかになるなど課題対策に追われた時期もありました。
その後、F-104J/DJが実戦部隊から退いた1986年(昭和61年)からは、配備数の上でもF-15Jが主力戦闘機となりますが、1989年(平成元年)より延命・能力向上目的の改修を受けた90機が「F-4EJ改」となり防空任務に就く事になります。尚、三沢基地の第3航空団第8飛行隊では、次期支援戦闘機のF-2配備が遅延のため、1997年(平成9年)から繋ぎとしてF-1の代わりにF-4EJ改を支援戦闘機として運用していました。
また、偵察型RF-4Eの2機が、事故により減少したことに対して、1990年(平成2年)からは、15機の近代化改修対象外の初期型F-4EJが、偵察型「RF-4EJ」に改修されています。
2020年(令和2年)には、F-4EJ改を戦闘機部隊として最後まで運用していた第301飛行隊が茨城県百里基地の第7航空団から、青森県三沢基地の第3航空団に移動して次期戦闘機F-35Aに機種更新します。そして、翌2021年(令和3年)3月に岐阜県各務原市にある岐阜基地の飛行開発実験団所属のF-4EJとF-4EJ改が退役し、航空自衛隊における全てのF-4の運用は終了することになりました。
今回の作品は、2021年3月まで航空自衛隊で最後まで運用されていた431号機です。本機は、国内生産機のEJ型で、かつ国内最初にEJ改型への改修された機体です。岐阜県各務原市にある航空自衛隊 岐阜基地の飛行開発実験団の配属機として、2021年3月に行われた退役ラスト・フライトで飛行した3機の内の1機でもあります。退役後の431号機は、令和5年3月より、岐阜かかみがはら航空宇宙博物館に収蔵、一般展示されています。
本キットは、ファインモールドから発売の1/72スケール 航空自衛隊 F-4EJ改 戦闘機"431号機(岐阜かかみがはら航空宇宙博物館所蔵機)"です。このキットは、現地の博物館内売店における限定販売の品で、デカールが展示機と同じマーキングとなったオリジナル仕様となっています。
キットメーカーが、ベストキットと太鼓判を押すだけあって、ナナニイとしてはパーツ数が多めで、パチピタに組み上がります。加えてパーツ間の継ぎ目が、パネルラインに合わせた設計となっているので、継ぎ目消しの作業は少なくて済むと思いきや、「モールド線の太さ」において、パーツ表面の繊細なモールド・パネルラインとのバランスが取れないので、結局、調整作業が発生し、その対処に試行錯誤することになりました。でも、排気ノズル廻りが別パーツとなっている等、塗装工程への配慮がなされている点は、特筆すべき内容となっています。
本作品の製作方針は素組みですが、強度上で所々気になった箇所については、補強を兼ねたプチ・ディテールアップを行っています。キットのコックピットに関して、計器パネルが選択パーツ式で、計器モールドが彫刻されているモノとデカール対応とするフラット面のモノとが付いています。今回はキャノピー・クローズを選択しますので、デカール対応としています。また、パイロットシートは、別売りアフターパーツを追加すると共に、コクピット・キャノピー枠に取付くバック・ミラーも追加してディテールアップしています。
機首先端のピトー管は、真鍮製の別売りアフターパーツを使用しています。また、垂直尾翼に設置されているピトー管も同別売りアフターパーツのセットで入っているのですが、垂直尾翼の厚さに対し軸が太すぎるので、使用を諦めて洋白線と真鍮パイプとを組み合わせて自作したパーツに置き換えています。また、機首右側面(コクピット前席と機首ノーズ・コーンとの間)の突起は、AOAセンサーでキットでは、一体成型の凸モールドとなっていますが、プラ脱型における抜けを考慮してか、短いので虫ピンの針先を鈍化させたモノに置き換えて、ディテールアップしています。因みにAOA(Angle Of Attack:迎え角)は機体の進行方向に対する迎え角を検知するセンサーとのことです。
本キットでは、灯火類は全て機体本体と一体化のプラ材にて彫刻されています。本作品では各航空灯類について、クリアー系マテリアルを使用して、自作透明パーツに置き換えています。垂直尾翼の前縁に設置されているアンチコリジョンライト(衝突防止灯:赤色)は、UV透明レジンで。各翼端灯(主翼端灯:右青色・左赤色、垂直尾翼灯)と尾灯:白色は、半球形状に透明プラ材を熱加工してパーツを自作しています。
エンジン排気ノズルは、キットパーツを使用しています。またノズル内は奥のエンジン・リングと共に実機では、薄クリーン系の保護塗装が施されていますので、それらしく基本塗装後、「アルコール落とし法」によるウエザリング塗装を行っています。
また、実機F-4の排気整流パネル面には、その構造上で下地材の配置構成から焼けによる独特の縞模様が付きます。これを再現するためにマスキング塗装による塗り分けで、ディテールアップを行っています。
また、水平?尾翼にも排気熱を考慮して無塗装金属面の部分があり、焼け等によるパネル毎の色味に違いが付いています。これも同様にマスキング塗装による塗り分けで再現しています。
キットにおけるパネルライト(編隊灯)の表現は、モールドでなくデカール対応となっています。モールドとしてノッペリ感が拭えないので、市販アフターパーツで用意されているパネルライト・パーツを機体の所定位置、垂直尾翼と機体(機首と胴体)部分に貼り付けて、立体的なモールドを追加してディテールアップしています。
主脚・前脚部分の各オレオ部分は、ハセガワのミラーフィニッシュ・シートを貼って、キラリとする金属感でリアル感を演出しています。
機体の下面にもコーション・デカールが大量に用意されています。
Fine
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