【カスケード塗り/応用形】

【塗装方法の解説】

本サイトの作品において、機体迷彩塗装に用いている多段階グラデーション塗装方法をカスケード塗りと称しています。
概要は、ベース色とする溶剤系アクリル塗料(ラッカー系塗料)の各ビン生指定色(ベース色)と、これらベース色を基準に一定のルールにて混色した中間色(基準色2色に付き1色)を加え、エアブラシによる黒系色(シャドー色)立上げ塗装で、濃色から中間色、明色へ順に色を重ね吹きにてグラデーション構築して行きます。加えて、塗装膜表面の平滑化と下色味の自然浮出しを兼ねた研磨処理を経て、黒系エナメル塗料でのウォッシング。最終にベース色や中間色で不具合箇所の部分補修とハイライト色の部分追加塗装を行います。
この塗装方法の特徴は、迷彩塗装に用いる各指定色(ベース色)とこれらの混色(中間色)、及び黒系下地色(シャドー色)との間で、全体的に連携かつ統制された階段状(カスケード)の色調(色相・明度)を構成することであり、グラデーション塗装を用いて外板パネル等のうねりや塗装面の経年劣化を表現しています。

【塗装方法の手順】

手順の解説は、ハセガワ製1/48三菱F-2Bを作例に順次行っていきます。もちろん、迷彩塗装のパターンは、航空自衛隊機・洋上迷彩色の3色(シャロウオーシャンブルー/ディープオーシャンブルー/レドームグレー)です。

塗装下地の調整と先行部分塗装

サフェーサー吹きにて塗装下地を整えた後、 Mr.カラー: レドームグレー(C376)にてレドーム部分やウォークウェイ・ライン等を先行塗装しマスキングします。また、コクピット部分や風防ガラス部分、翼端灯やライト部分についてもマスキングを行っておきます。

作業1:パネルライン部分への黒系色ライン塗装

最初の工程は、キット全体でスジ彫り表現されている全てのパネルライン部分、及び陰となる隙間等の部分へ黒系色(シャドー色)をエアブラシにて細吹きします。
因みに今回作例で使用した黒系色(シャドー色)は、Mr.カラー:セミグロスブラック(C92)です。

作業2:機体上面部分への濃ベース色の塗装

パネルライン部分等の黒系色(シャドー色)の残し加減については、直接パネルラインへベース色が乗らなければ、ほとんど残らなくても後工程で調整は可能です。

次に、前工程の黒系色(シャドー色)で細吹きしたパネルラインや陰部等を避けて、パネルラインで囲まれた面(パネル・ゾーン)へグラデーションを付けるように上面濃ベース色をエアブラシにて吹きます。この時、パネルライン部分等の黒系色(シャドー色)がうっすらと残るように調節することがポイントです。
因みに今回作例で使用した上面濃ベース色は、Mr.カラー: ディープオーシャンブルー (C375)です。

続けて、仕上り塗装面に微妙な色変化を持たせるために、その下地塗装として赤系色でドット・アクセント色(以下 DA色)を機体上面のパネル面にランダムにスポット吹きします。尚、機体色とDA色との組み合わせについて、濃色の場合は同当明度の色相環での隣色(例 機体色:濃緑色→DA色:濃紺色))、明色の場合は同系色の濃色(例 機体色:緑灰色→DA色:濃緑色)とすることを目安としています。因みに本作例で使用した DA色 は、 Mr.カラー: 艦底色 (C29)です。

作業3:機体上面の濃ベース色へハイライト色(中間色)の塗装

さらに中間色(上面濃ベース色と上面明ベース色を概ね6:4で混色)を ハイライト色として細吹きにて、パネル・ゾーン内へスポット・グラデーション塗装するのですが、DA色は細かく分断しながら馴染ませうっすら残す様に吹きます。その際も前工程の上面濃ベース色や黒系色(シャドー色)は薄っすらと残るようグラデーションを付けます。
因みに本作例で使用した上面明ベース色は、: Mr.カラー: シャロウオーシャンブルー (C375)です。

作業4: 機体上面の濃迷彩色における縁取り塗装のマスキング

実機において、上面の濃迷彩色部分は明迷彩色との塗分けラインに沿って縁取りらしきラインが見えます。本作例ではこの雰囲気を表現すべく、組立て説明書に掲載されている塗装図を拡大コピーして切り出したものをマスク材として使用し、再度上面の濃ベース色を塗分けラインに沿って吹いています。尚、マスキングは 僅かなボカシ幅でもって境界ラインを形成すべく、1mm厚の両面テープ(弱粘着)で固定と浮きクリアランスの確保を行っています。

縁取り塗装が完了しマスキングを除去し、上面の濃迷彩色部分の塗装が完了した状態。(上写真の状態)

作業5: 機体上面・下面部分への明ベース色の塗装

上面部分へ上面明ベース色を塗装するため、濃迷彩色部分との塗分けラインに沿ってマスキングを施します。因みに本作例では組立て説明書に掲載されている塗装図を拡大コピーして切り出したもの(先の工程での切り抜き残し分)をマスク材として使用し、同様に僅かなボカシ幅でもって境界ラインを形成すべく、1mm厚の両面テープ(弱粘着)で固定と浮きクリアランスの確保を行っています。

続けて、濃迷彩色部分と同様に仕上り塗装面に微妙な色変化を持たせるために、DA色を機体上面のパネル面内にランダムにスポット吹きします。因みに本作例で使用した DA色 は、 濃迷彩色部分と同じMr.カラー: 艦底色 (C29)です。

作業6:機体上面・下面の明ベース色へハイライト色(中間色)の塗装

さらに中間色(上面明ベース色とレドームグレー色 (C376)を概ね6:4で混色)を ハイライト色として細吹きにて、パネル・ゾーン内へスポット・グラデーション塗装するのですが、DA色は細かく分断しながら馴染ませうっすら残す様に吹きます。その際も前工程の上面濃ベース色や黒系色(シャドー色)は薄っすらと残るようグラデーションを付けます。

機体迷彩塗装が完了しマスキングを除去した状態。尚、マスキングからはみ出したミストは、エナメル溶剤を含ませた綿棒で優しく擦って可能な限り除去します。(上写真の状態)

作業7:機体全体塗膜の研磨

全体の塗装が完全乾燥(丸1日間の養生をお勧めします)したら、機体全体に番手の高い(細かい目)スポンジ・ヤスリ(使い古して柔らかくなったものを使用すると良いです)→ヤスリステック フィニッシュ(ウェーブ)を使用して艶が出るまで研磨します。この研磨の目的は塗膜の表層部分のザラ付き除去や塗分け部の不陸を慣らすことと、パネルラインのシャドウ色やDA色のグラデーションの調子をある程度整えることです。尚、研磨によって凸部や角部等で部分的に下地色が露出することがありますが、後工程での補修や調整は可能(ただし、限度がありますので最小限に留めて下さい)ですので、作業が完了したらそのまま次工程へ移ります。

作業8:ウォッシング塗料の塗布

機体全体色のトーンを整えることと、パネルラインやリベット部分等の凹部への墨入れとを兼ねて、機体全体にウォッシング塗料を塗布します。尚、ウォッシングにはエナメル系塗料を薄めたものやスミ入れ等専用に調合された塗料を使用します。
因みに今回作例で使用したのは、タミヤ:スミ入れ塗料(ブラック)と同(ダークブラウン)を2:1にて混色したものです。

作業9:ウォッシング塗料の拭取り

全体のウォッシング塗装が概ね乾燥したら、エナメル系溶剤を付けたティッシュペーパー等で全体を荒拭きし、その状態で一旦乾燥させます。次に、エナメル系溶剤を付けた綿棒を使って、僅かにウォッシング塗装が残る様に一方向に綿棒を動かして拭き取って行きます。尚、綿棒を動かす方向は、機体胴体部は上から下へ、翼部分は前から後ろへとすると良いようです。
この一連の作業が完了したら、ウォッシング塗装が濃く残ってしまった部分や、前工程の塗膜研磨時で不自然に下地色やDA色が露出した部分へ、エアブラシ細吹きで濃迷彩色部分には濃ベース色、明迷彩色部分には明ベース色をパネル・ゾーン内でランダム・スポット吹きにて補正します。(必要に応じて再マスキングします。)この時、各迷彩色部分は、ウォッシング効果でトーン・ダウンしていますので、再塗装色が第3の中間色となります。

作業10:基本塗装の完了⇒クリアーコート塗装

以上の基本塗装が完了したら、溶剤系アクリル塗料(ラッカー系塗料)のクリアー色にて全体をコート塗装し、これまでの塗装を保護します。
因みに今回作例で使用したクリアー色は、この後のデカール貼り工程を考慮してMr.カラー:スーパークリアーⅢUVカット/光沢(GX112)としています。

以上

タイトルとURLをコピーしました