【塗装方法の解説】
本サイトの作品において、機体迷彩塗装に用いている多段階グラデーション塗装方法をカスケード塗りと称しています。
概要は、ベース色とする溶剤系アクリル塗料(ラッカー系塗料)の各ビン生指定色(ベース色)と、これらベース色を基準に一定のルールにて混色した中間色(基準色2色に付き1色)を加え、エアブラシによる黒系色(シャドー色)立上げ塗装で、濃色から中間色、明色へ順に色を重ね吹きにてグラデーション構築して行きます。加えて、塗装膜表面の平滑化と下色味の自然浮出しを兼ねた研磨処理を経て、黒系エナメル塗料でのウォッシング。最終にベース色や中間色で不具合箇所の部分補修とハイライト色の部分追加塗装を行います。
この塗装方法の特徴は、迷彩塗装に用いる各指定色(ベース色)とこれらの混色(中間色)、及び黒系下地色(シャドー色)との間で、全体的に連携かつ統制された階段状(カスケード)の色調(色相・明度)を構成することであり、グラデーション塗装を用いて外板パネル等のうねりや塗装面の経年劣化を表現しています。
【塗装方法の手順】
手順の解説は、タミヤ製1/48チャンスヴォ―トF4U-1「バードゲージコルセア」を作例に順次行っていきます。尚、迷彩塗装のパターンは、アメリカ海軍における1941年10月13日付で制定されたブルーグレイとライトグレイの2色迷彩としています。
上面塗装下地の調整
塗装下地を整えた後、機体迷彩色の塗装を行う事前塗装として、国籍章や機体番号を塗装で行った場合はマスキングします。また、コクピット部分や風防ガラス部分、翼端灯やライト部分についてもマスキングを行っておきます。
作業1:パネルライン部分への黒系色ライン塗装
最初の工程は、キット全体でスジ彫り表現されている全てのパネルライン部分、及び陰となる隙間等の部分へ黒系色(シャドー色)をエアブラシにて細吹きします。
因みに今回作例で使用した黒系色(シャドー色)は、Mr.カラー:グロスシーブルー(C365)です。
【補足】この色を選んだ理由は、この後に塗装するベース色はブルーグレイなので、ブラック色を使用した場合、色味や明度差が強く出る傾向となるのを避けるためです。
作業2:機体上面部分へのベース色(濃色)の塗装
次に、前工程の黒系色(シャドー色)で細吹きしたパネルラインや陰部等を避けて、パネルラインで囲まれた面(パネル・ゾーン)へグラデーションを付けるように上面ベース色(濃色)をエアブラシにて吹きます。この時、パネルライン部分等の黒系色(シャドー色)がうっすらと残るように調節することがポイントです。
因みに今回作例で使用した上面ベース色(濃色)は、Mr.カラー:ブルーグレー(C367)です。
作業3:機体上面ベース色(濃色)へハイライト色(中間色)の塗装
さらに中間色(上面ベース色と下面ベース色の混色)を細吹きにて、パネル・ゾーン内でリベットラインを避けて吹きますが、その際は前工程の上面ベース色(濃色)や黒系色(シャドー色)が薄っすらと残るようグラデーションを付けます。
因みに今回作例の機体上面で使用した色をまとめると、上写真で敷紙の色の通りです。左から順に、シャドー色:グロスシーブルー(C365)、上面ベース色:ブルーグレー(C367)、中間色:(上面ベース色と下面ベース色を6:4で混色)、下面ベース色:グレーFS26440(C325)尚、使用塗料は全てMr.カラーです。
下面塗装下地の調整
上面と同様に塗装下地を整えた後、機体迷彩色の塗装を行う事前塗装として、国籍章や機体番号の塗装を行いマスキングします。また、コクピット下面のアクセスパネル・ガラス部分、翼端灯やライト部分、及び主脚・尾輪収納庫部分についてもマスキングを行っておきます。
作業4:下面塗分けのマスキング
続いて、下面部分へ下面ベース色を塗装するため、上面との塗分けラインに沿ってマスキングを施します。
因みに今回作例で機体胴体部のマスク材には、トレシングペーパー(半透明紙なので位置確認が容易)を使用し、僅かなボカシ幅でもって境界ラインを形成すべく、1mm厚の両面テープ(弱粘着)で固定と浮きクリアランスの確保を行っています。
作業5:下面ベース色(明色)の塗装⇒完了後マスキング材の除去
上面塗装と同じく、前工程の黒系色(シャドー色)で細吹きしたパネルラインや陰部等を避けて、パネルラインで囲まれた面(パネル・ゾーン)へグラデーションを付けるように下面ベース色(明色)をエアブラシにて吹きます。この時もパネルライン部分等の黒系色(シャドー色)がうっすらと残るように調節することがポイントです。
因みに今回作例で使用した下面ベース色(明色)は、Mr.カラー:グレーFS26440(C325)です。
下面塗装が完了したら、クリア部分を除いて下面塗分け用、及び国籍章や機体番号のマスキング材を除去します。(上写真の状態)
作業6:機体全体塗膜の研磨
全体の塗装が完全乾燥(丸1日間の養生をお勧めします)したら、機体全体に番手の高い(細かい目)スポンジ・ヤスリ(使い古して柔らかくなったものを使用すると良いです) →ヤスリステック フィニッシュ(ウェーブ)を使用して艶が出るまで研磨します。 この研磨の目的は塗膜の表層部分のザラ付き除去や塗分け部の不陸を慣らすことと、パネルラインやリベットラインでの色のグラデーションの調子をある程度整えることです。尚、研磨によって凸部や角部等で部分的に下地色が露出することがありますが、後工程での補修や調整は可能(ただし、限度がありますので最小限に留めて下さい)ですので、作業が完了したらそのまま次工程へ移ります。
作業7:ウォッシング塗料の塗布
機体全体色のトーンを整えることと、パネルラインやリベット部分等の凹部への墨入れとを兼ねて、機体全体にウォッシング塗料を塗布します。尚、ウォッシングにはエナメル系塗料を薄めたものやスミ入れ等専用に調合された塗料を使用します。
因みに今回作例で使用したのは、タミヤ:スミ入れ塗料(ブラック)と同(ダークブラウン)を1:1にて混色したものです。
作業8:ウォッシング塗料の拭取り(荒拭取り)
全体のウォッシング塗装が概ね乾燥したら、エナメル系溶剤を付けたティッシュペーパー等で全体を荒拭きし、その状態で一旦乾燥させます。
作業9:ウォッシング塗料の拭取り完了⇒機体色の部分補修・調整塗装の完了
次に、エナメル系溶剤を付けた綿棒を使って、僅かにウォッシング塗装が残る様に一方向に綿棒を動かして拭き取って行きます。尚、綿棒を動かす方向は、機体胴体部は上から下へ、翼部分は前から後ろへとすると良いようです。
この一連の作業が完了したら、前工程の下面ベース色(明色)の塗布範囲で特に機体側面部へ再度下面ベース色(明色)をパネル・ゾーン内でリベットラインを避けて吹きます。(必要に応じて再マスキングします。)この時、前工程の下面ベース色(明色)は、ウォッシング効果でトーン・ダウンしていますので、再塗装色が第3の中間色となります。
また、上面については、ウォッシング塗装が濃く残ってしまった部分や前工程の塗膜研磨時で不自然に下地色が露出した部分は、エアブラシ細吹きで中間色や上面ベース色(濃色)をスポット塗装して補修・調整します。(下面と同様に、再塗装色がハイライト色となります。)
以上の基本塗装が完了したら、溶剤系アクリル塗料(ラッカー系塗料)のクリアー色にて全体をコート塗装し、これまでの塗装を保護します。
因みに今回作例で使用したクリアー色は、Mr.カラー:スーパークリアー半光沢(C181)です。
以上